伝統の織りを今に伝えるみはらしファーム「草の家」の代表
伊那市荒井区
丸山輝子さん(67)
裂き織は、この地域に根付いてきた昔ながらの織物。着古したぼろなどを細く裂いて横糸として織り込むことで、もう一度布として生かす。
その裂き織や、草木染めといったの伝統技術の体験してもらおう竏窒ニ7年前から、伊那市西箕輪の農業公園みはらしファームにある工房「草の家」で活動している。裂き織をともに学んだ女性たちが集まって手探り状態からスタート。当時は、どんな形になるか想像もつかなかった。古くなって使われなくなった織り機を地元民家から譲り受けたり、体験内容を考えながら試行錯誤。家事の合間を縫いながら、今の形を見出してきた。
「メンバーはみんな織りが好きな人ばかり。最近は“リサイクル”や“自然に優しい”って言う言葉が取り沙汰され、裂き織も注目されるようになっているけど、草の家を始めたころは、まだそれほど注目されていなかった。『だんだん時代に合ってきたね』なんて笑いながら話すんですよ」。
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伊那市に移り住んで24年。それから織りに携わってきた。当初は伊那紬を織っていたが「昔の織り機で、自分だけの作品をつくりたい」と、裂き織を学べる講座を受講。そこで、紬と全く違う裂き織の世界を知った。なんでもその辺にあるものが使え、応用も利く。身近なものから身近な作品が生まれる。気軽に使いたくなる素朴さも魅力だった。
「今は、その辺の古着を見て『次は何を作ろうかな』って考えたりするんですよ」と笑う。
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工房には、子ども連れの家族から年輩の人まで、さまざまな人たちがやってくる。子どもにとって裂き織は初めての体験。一方、年輩者の中には、「懐かしい」と、昔を語る人も多い。
「『ばあちゃんがやっていたのを手伝った』って人もいます。私は講習を受けて裂き織を学んだけど、そういう人は実際の生活に基づいた裂き織を知っている」。
生活の糧として裂き織をしていた当時の話は、決して楽しいものばかりではない。はた織りの季節は農閑期となる冬。寒い中、それでも家族のために織らなければならなかった当時の人は、どんな思いで裂き織をしていたのだろう竏秩Bさまざまな思いが巡る。
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今後は、もっと子どもたちにこうした伝統に触れてもらいたいと考えている。
「今は生活そのものが便利になっているけど『昔はこういう風に織っていたんだ』って体験しながら、昔の人の思いも感じてほしい。古いものを大切に使ったり、決して便利ではない生活を、体験を通して自然に伝えていければ」。