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切り絵がやりがい
箕輪町
高橋修司さん

切り絵がやりがい<br>箕輪町<br>高橋修司さん

 「切り絵のすばらしさ、魅力を皆がわかってくれたらうれしい」
 長野県長寿社会開発センターの「2006信州ねんりんピック」高齢者作品展の手工芸部門で、初出品した切り絵作品「白浪五人男」が、県知事賞に次ぐ県長寿社会開発センター理事長賞を受賞した。
 「ほかに立派な人がいるのに、おれが賞をもらった?ってびっくりしたね」。受賞の報告が信じられず、9月の上田市丸子文化会館での表彰式・作品展に妻と行き、展示されている自分の作品を見て初めて実感した。「賞状なんて、消防団のポンプ操法県大会で優勝して以来。この年になってもらうことなんてないから、うれしかった。これからの励みになる。やる気が沸いてきた」という。
 切り絵との出合いは3年前。岡谷市で兄弟で精密業をしていたが、03年に突然の病に襲われた。病名は急性横断性脊髄炎。両足が麻ひし、車いす生活を余儀なくされた。鹿教湯に行き、教わったのが切り絵だった。その後、長野市のリハビリセンターに入所し、切り絵の先生に勧められ、本格的に学び始めた。
 「始めのころは手を切りそうでおっかなくてね。だんだんやるうちに、これはすばらしいと思った。面白くてはまっちゃった」
 箕輪町の自宅に戻ってからも、リハビリを続けながら先生とやりとりし、切り絵に取り組んでいる。
 切り絵は黒い紙に下絵を張り、20センチの小刀1本で切り込んでいく。切った紙を白い画用紙に張って完成する。
 「実際やってみると細かい作業。集中してやらないと、ちょっとほかのことを考えると違う所を切ってしまう。根気はいるけど、だれでも出来るさね」
 1日2時間ほど、窓辺の指定席で作業する。これまで山野草や人物画にも挑戦したが、一番好きなのは風景画。今は、非常に細かい「花火」の作品を制作中だ。
 「切り絵は白と黒のコントラストの美しさが魅力。細かいところまで表現できるのも良さ」。切り絵に色を塗る作品や色紙もやってはみたが、「やはり白黒がいい」という。
 「おれは山と歌うことが好きで、病気にならなければ切り絵なんて知らなかった」。岡谷の合唱団で15年間、バスのパートで歌っていたほどの音楽好きだが、車いすでは仲間に迷惑がかかると、音楽から離れてしまった。
 「今は切り絵がやりがい。朝起きて、今日はまた切り絵をやって、あそこまでやろうとか、もう少しで完成すると思うと張り合いになる」
 作品は人気があり、「欲しい」と言われて近所の人や親戚に何十枚とあげた。切り絵を教えてほしいと頼まれ、「教えるなんて生意気なことはできないけど、一緒に楽しむなら…」とボランティアで教えてもいる。
 切り絵だけでなくビーズ工芸、パソコン、20年も続けているハーモニカなど、1日の中でさまざまな楽しみがある。「いろいろやりすぎだけど、趣味があるっていいことだと思うよ」。24時間治まることのない足のしびれも、趣味に取り組むことで少しは気がまぎれるという。
 「家族皆が協力してくれるから、おれもできる。病気になっておしまいじゃなく、やればいろいろある」
 沢区の文化祭に切り絵、町の文化祭にビーズ工芸を出品する。「やったら、人にみてもらうのも大切だよね」(村上裕子)

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