たそがれシーラクバンド
「皆でやると音が音楽になる」
夜、練習会場の公民館に楽器やアンプを持って仲間が集まる。「4小節は皆で吹いたほうがいいでしょ」「ここはギターとベースで」。アイデアを出し合いながら曲作りに取り組む。真剣さの中にも、音楽が楽しくて仕方がない、そんな空気で満たされていく。
05年5月18日、「たそがれシーラク会」が発足した。バンド名は「たそがれシーラクバンド」。“たそがれ”という言葉通り、シニアの年代に入った仲間が音楽という共通の趣味を通じて、音楽という一つの志を楽しもうと生まれた。活動の一番の目的はボランティア活動。高齢者の福祉施設などを訪問して演奏し、楽しんでもらいたいという。
メンバーは箕輪町と伊那市に暮らす6人。トランペット宮下紀彦さん、ハーモニカ平沢秀彦さん、ギター唐沢利文さん、ベース大野堅司さん、キーボード久谷みどりさん、テナーサックス有賀國光さん。年齢は62歳から67歳だが、「気持ちは25歳」と若々しい。
音楽経験者は2人で、残りの人は60歳を過ぎて始めた。中学の同級生、高校の同級生、隣組など皆が少しずつ知り合いで、「『やりたいね』『やろうか』と、なんとなくいいムードで出来上がった」。
名前の「シーラク」は漢字で「志楽」。読んで字のごとく「志を楽しむ」という皆の思いからなり、響きを考えてシラクをシーラクにした。「楽しく死ねるというもう一つの意味もある」とメンバーは笑う。
「音楽は一人でやっていてもおもしろくない。多くの人とやると気持ちが触れ合える。音楽の盛り上がりも違う」
箕輪町の沢公民館で月2回、3時間ほど練習に励む。コンピューターで編曲し、ドラムがいないためコンピューターでドラムの音を入れている。
ジャンルは演歌、童謡、叙情歌、民謡と幅広い。「銀色の道」「月の砂漠」「ああ人生に涙あり」「花笠音頭」「森のくまさん」「大きな栗の木の下で」など、レパートリーは今のところ12、13曲で、少しずつ増やしている。
デビューは発足から1年後の今年6月、沢区の敬老会だった。これが好評で、9月には箕輪町内4地区から声がかかり、敬老会で演奏。すでに5ステージを経験した。今後も沢区の文化祭のほか保育園、福祉施設での演奏を予定している。
「気心の知れた人が集まって、難しいことは何もない。言いたいこと言って、和気あいあいで、本当に楽しい」
買ったばかりの楽器を手に、ピーもプーも音が出なかった人が、熱心に練習し吹けるようになった。陰の努力があり、うまくいかずに苦しいときもある。しかし基本は「志楽」。「楽しむことが一番」だという。
「ピタッと合うと心地いい。やっている自分たちが楽しい」
「一人が“ド”だとすれば、皆がいると和音、コードになる」。そんな快感を味わいながら、「あわよくば夢はカーネギーホール!」と笑顔で楽器に向かう。(村上裕子)