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ツキノワグマ出没相次ぐ…不安

農業生産意欲も奪う

ツキノワグマ出没相次ぐ…不安

 全国各地でツキノワグマの出没が相次いでいる。上伊那でも、捕獲数が64頭(30日現在)と昨年の3倍。クマによる人身被害が出るなど人里に姿を現すクマに、地域住民は不安を募らせる。農作物にも影響を及ぼし、農家の生産意欲を奪う結果も招いている。
 上伊那地方事務所環境森林チームによると、クマは7月上旬から出没し、多いときで1日に5頭を捕獲。体長、体重などをデータをとり、番号札を付けるなどして山へ放す。再度、里に戻ってくるクマは1割程度で、同じおりに入るケースはないという。
 捕殺数は、県の「特定鳥獣保護管理計画」で定められる。上伊那は11頭だが、すでに14頭を捕殺した。伊那市の西春近、西箕輪などが大半を占め、ほかは辰野町、飯島町。1件を除き、すべてが西山。
 10月下旬になっても目撃情報が届く状況に、猟友会員らは「9月に入ると、里の近くに出てこなかった。今年はドングリなどが不作年で、えさがないためでは」と推測する。
 環境森林チームは「まだ注意が必要」とし▽山へ入るときは爆竹を鳴らす。ラジオや鈴など音の出るものを複数持つ▽農地には電気さくを取り付ける竏窒ネどを挙げる。また、自宅の庭に柿や栗、ハチの巣がある場合、クマが近づく可能性があると注意を促す。
 西春近で果樹園を営む酒井健さん(72)は、リンゴ園30アール余の3分の2がクマの被害を受けた。
 果樹園は中央道西側にあり、フジやつがるなどを栽培。7月くらいからクマが出没し、リンゴの木の枝を折ったり、収穫を控えたリンゴを食べたりした。
 果樹園の周囲を電気さくで囲み、さらにネットを張った。それでも、その下をくぐる。夜間、ラジオを流す工夫もしているが、クマはあの手この手で園内に入ってくる。
 酒井さんは「また、やられたかという感じ。手間賃が出ていくだけで、所得にならない。年だもんで、作るのが嫌になってきた」と半ばあきらめるが「お客さんの要望があるから続けている。それだけに支えられている」と話す。
 05年度、上伊那管内のクマによる野菜類や飼料作物の被害(農家の申告分)は170万円。電気さくや防護さくの設置のほか、山と耕作地の間に見通し地帯を作る対策があるものの、これといった手立てがない。

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