第38回日展初入選 松田靖宏さん(47) 伊那市狐島
陶芸の魅力は「土」。子どものころに土で遊んだ記憶、手に残る感触…。無心になって創作する楽しさがある。
第38回日展の第4科工芸美術(陶磁)で、3度目の出品にして初入選を果たした。
入選作は「遙(はるか)」。「夕方の空を見ることが多く、金色に輝いて見えるときがある」と、時間の流れから生まれる自然の美しさを表現した。高さ26センチ、幅98センチ、奥行き11センチ。板作りの方法で、平らに伸ばした土から型を取り、厚さ1センチにした土を張り合わせ、2つの半円の曲線部分を重ねた。ゆう薬は、オリジナルの水色系。上部の半円の側面には、雲をイメージした白色と金色が入る。
日展には、その年にできるいい作品を出品する。入選は目標としていただけに「まさかと思った。身に余る光栄」と喜ぶ。「創作活動の励みになると同時に、これからどうなるのかというプレッシャーが大きい。今年以上に、よりよい作品を仕上げることが目標」と気持ちも新た。
陶芸を始めたのは、35歳のとき。伊那社会保険健康センターの陶芸教室の募集チラシを見つけ、早速、申し込んだ。5年ほど通い、高遠焼の唐木米之助さんから指導を受けた。
その後、唐木さんの紹介で上伊那工芸会に入会。日展会員の彫鍛金家・木下五郎さん=駒ケ根市=に師事。会員は染めもの、木工などさまざまな分野の作家で、切磋琢磨(せっさたくま)する。使う素材は異なるものの、日本のものづくりの原点は同じ。刺激を受け、イメージがわくこともある。
「日展に自分の作品を出品するとは想像もしていなかった」。良い師、同じ志を持つ仲間に出会い、家族の協力があったからこそ、今回の結果につながったと感謝する。
自営業のかたわら、自宅の敷地に設けたかまで創作活動を続ける。生活雑器はほとんど作ることができず、伊那展、県展、現代工芸展、日展と締め切りに追われる。
「作る度に納得はできません。出しては嫌になり…。思いをいかに形にするかが大事」と自分らしい表現を追求する。
伊那美術協会、信州美術協会などに所属。
(湯沢康江)