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勝山織物飯島きぬの里、志村明代表(53)、

蚕飼いの技を継承し高品質の絹織物を生産

勝山織物飯島きぬの里、志村明代表(53)、

 飯島町飯島の勝山織物飯島きぬの里は、代表の志村明さんを中心に、釜田友紀さん、秋本賀子さん、永長ゆう紀さんの4人で、養蚕から、製糸、織まで一貫して、絹織物を生産する全国的にも、ほかに類をみない工房だ。
 きぬの里が町内の空家を借り、生産をスタートしたのは4年前。 4人の出会いは、さらに数年遡り、志村さんが10年間、講師を務めた愛媛県野村町(現西予市)の野村シルク博物館の染織講座、繭からの糸づくり、染色、手機織りまでに全工程を習得し「シルクにかかわる仕事をしたい」と、意気投合した。
 野村町はかつて西日本有数の養蚕地帯だったが、湿度が高いため、糸の節が上がりやすく、絹織物生産には最適とは言えなかった。 自然環境のいい場所で絹織物を続けようと、場所を探した。湿度が低く、歴史的に良質な繭が生産されていた蚕飼いの里、伊那谷に着目し、飯島町の空家を借り、生産拠点を構えた。空家は改修が必要なため、京都西陣の勝山織物の資金提供を受け、3年前から本格稼働を開始した。蚕を飼い始めたのは2年前から。かつて養蚕地帯だった飯島町も、繭価格の低迷や後継者不足、安価な輸入品や化学繊維との競合に勝てず、養蚕農家は激減、今では1軒だけ。
 「このままでは、最高品質の繭を生産する日本の養蚕の技術、道具など全てが無くなってしまう。まず、自分たちが使う、良質の繭を自分たちで生産しよう」と、県新規就農里親研修制度を利用し、以前、養蚕をしていた宮沢八千代さんに指導を受けた。
 赤坂で桑園4アールと蚕室用にハウスを借り、春、夏、秋の3回、合わせて7箱を飼育、成長、脱皮を繰り返し、約8センチに生育、体が透き通ると、まぶしに入れる。糸を吐き出し、数日で繭になる。
 生産した繭は冷蔵したり、長期保存するために約1週間塩漬けした後、座繰器を用い、糸を引き出し、枠に巻き取る。天然染料で染め、経糸の長さをそろえ、機に掛け織り上げる。
 織り上がった布は、湯通し、天日干し、さらに木槌で叩いて風合いを出す。製糸から仕上げるまで、最低でも1カ月から1カ月半かかるとか。
 秋本さんは「蚕の個体差が大きく、おやといなどのタイミングが難しいが、繭は節が上がり難く、格段に品質の良い繭が出来た」と話す。
 代表の志村さんは「着物産業が縮小する中で、素材を重要視し、最高品質の物を作りたい、需要は少ないが、必ずある。日本から養蚕がなくなることは、日本では最高級の絹織物が出来なくなること。『なくしていいのか』という危機感もあった。養蚕から、織りまで全工程を行なうことで、時代の変化を回避できるのでは」と話す。

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