【図書購入費を40年間寄付 米山政一さん】
駒ケ根市上穂南
1965(昭和40)年の12月、赤穂小学校のPTA役員の用事で、ある家庭を訪問した。ふと部屋の壁を見ると、子どもの寝床の枕元に靴下がぶら下がっているのが目に止まった。
「中をのぞくとミカンが1つ入っていた。何かのおまじないかと思って聞いたら、何とそれが子どもへのクリスマス・プレゼントだったんだ」
多くの家庭が貧しく、生活していくのがやっとの時代ではあったが「それでもあまりにその家の子が哀れでね…。後でおもちゃを1つ、安い物だが買って持って行ってやった」。
だが貧しい家はそこだけではない。自分の家も裕福というわけではないから、プレゼントを買って一軒一軒に配ることもできず、どうしたらいいだろうかと考えた。
「それで思いついたのが本なんだ。当時、小学校の図書館にもそう多くの本はなかった。本を学校に贈れば子どもたちみんなが喜んでくれるんじゃないかと思ったんだよ」
翌年から12月になると図書の購入費として小学校に毎年数万円ずつを寄付した。金額は特に決めず、その年その年に都合のつくだけの額を贈り続けた。
「本当はね、当時小学校に世話になっていた自分の子どもが卒業したらやめようと思っていた。3年間ぐらいのつもりだったんだ。でも学校で子どもたちに『おじさん、また来年もお願いします』と言われたり、礼の手紙をたくさんもらったりするとね、やめるわけにはいかないじゃないか。そうこうしているうちに今度は孫が入学した竏秩Bそんなことで今までずっと続いているだけだ」
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毎年のクリスマス・プレゼントは一度も欠かされることなく、40年がたった。今、図書館の一角には「米山文庫」コーナーが設けられている。これまでに学校が購入した図書の累計数は1097冊。寄付金の総額は百数十万円にもなるが「書き留めているわけじゃないから一体いくらになっているのか分からんなあ。まあ子どもたちに喜んでもらえるなら、これからも続けようと思っていますよ」