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伴走で障害を持つアスリートの役に立てれば
武田美穂さん(41)伊那市狐島

子育て一段落でマラソンに挑戦

伴走で障害を持つアスリートの役に立てれば<br>武田美穂さん(41)伊那市狐島

 05年7月の富士登山競争女性の部で全国13位に食い込んだ。富士吉田市役所をスタートして富士山頂上まで駆け上がる過酷なレース。女性の部は139人が参加したが完走者はわずか37人。04年の初出場でも完走したが、今回はさらに成績を上げた。
 5月に八ヶ岳野辺山高原で行われた100キロウルトラマラソンでは3位に入賞。超長距離では県内で注目されるランナーだ。
 「昔から体力とおしゃべりだけは自信があったんですよ」
 大きな声で気さくに話す。
 マラソンを始めたのはたった2年前。上伊那長距離界有数のランナーである、パートナーの健治さんに影響され、子育ても一段落したのを契機に40歳で走り始めた。
 ◇
 「でも、私が力をつけることが出来たのは、伴走をさせてもらうようになったおかげなんです」
 宮田村在住の盲目のランナー・中塚誠さんのトレーニングに伴走者としてつきそう。週に最低2回、2人で20縲・0キロを走る。輪になった細いロープを握り合い、声を掛け合いながら、山を登り谷に下る。
 「目は見えなくても男性の一流ランナーですから、どんどん引っ張ってもらえるんです」と武田さんが言えば、「いやいや、武田さんのスタミナの方がすごいですよ」と中塚さんが笑う。
 中塚さんが出場した長野マラソンでは、伴走は中塚さんの息子さんら別の二人が受け持ったが、42・195キロの全過程を通して道を案内したり、外のランナーに道をあけてもらうよう頼んだりするサブ補助を務めた。
 「『道明けてー!』っていう声が大きかったから効果があったですよ」とは、二人の共通意見だ。
 ◇
 「障害者の方に安心して走ってもらわないといけない。それが伴走の難しいところだといつも思います」
 坂だとか、曲がるだとかの走路の状況。砂利道だとか、泥道だとかの路面の様子。疲れたか、汗は大丈夫か、水はいらないか、といったランナーの状況……。話し掛け、会話を交わしながら、目になり耳になって走る。自分が体力切れになっても、相手が不安にならないように、それをそぶりに出さないことが一番大変だという。
 「人に対する優しさとか気配りとか、本当の意味で初めて分かりかけて来たのかもしれないです」
 ◇
 高校時代は陸上部。ガールスカウトの経験も長く、結婚後はママさんソフトボールでも活躍した。伊那市の海外派遣でドイツ・イタリアの街づくりの研修に行ったこともある。そんな武田さんが始めた新たな挑戦。
 「障害を持つアスリートの役に立つことができ、それが自分の記録や成長につながるって、なんかとってもうれしいことですよねぇ」
 初秋の青空の下、まぶしそうに笑った。

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