権兵衛トンネル開通後1年~交通~
国道361号伊那木曽連絡道路(権兵衛トンネル)の交通量は昨年12月末で、109万台を超えた。伊那インターチェンジ(IC)の利用台数が10%増加するなど高速道路と一体になった広域的な活用がみられる。木曽の国道19号を通過する大型車両の流入による混乱が心配されたが、伊那建設事務所では「渋滞も、暴走車もなく順調に推移している」と話す。
木曽建設事務所の交通量データ(開通翌日縲・2月末)によると、伊那から木曽が54万1663台、木曽から伊那が54万9142台。一番多かった日は、ゴールデンウィーク中の5月4日で1万台を突破した。1日当たりの平均は、両方向合わせて、平日が2745台、休日が4418台。通行車両の45%が県外車の利用となっている。
観光バスを含む大型車の混入率は累計で13・7%。2月当初と比べ、3倍以上に増えた。
木曽からの流入車両に対応し、南箕輪村沢尻に沢尻バイパスを建設、伊那市街地へう回させている。
昨年6月、伊那建設事務所の交通調査(12時間)で、361号から左折して沢尻バイパスを通った車が11・6%(515台)増、そのまま直進して川北信号機を下った車が9・3%(378台)増だったことがわかった。春日街道西側に位置する広域農道で一部拡幅、歩道設置が進められたが、大萱信号機の通過は3・8%(164台)増にとどまった。伊那インター線は10・3%増。
伊那建設事務所は、周辺道路整備の必要性について、大型車の通行に対応できる道路だが、交通実態を踏まえ、今後、検討するとしている。春には、車の流れを把握するため、範囲を広めて交通量を調査する。
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市町村合併や権兵衛トンネル開通に伴い、伊那市は「伊那地域における新たな交通ネットワークシステム構築のための検討会」を設け、新市の総合的な交通体系を検討している。
観光客の誘致や地域振興などの観点から▽新市発足に伴う旧市町村の生活交通のあり方▽権兵衛トンネルを利用した広域的な交通ネットワーク▽地域の観光資源を生かすための公共交通のあり方竏窒ネど木曽地域を含め、具体的な運行計画を練る。
地域住民アンケートで、伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用を尋ねた。
その結果、伊那は「ぜひ利用してみたい」「条件次第で利用してみたい」が24・6%で、「全く利用しない」は34・3%だった。
利用ニーズの目的地は温泉、中山道宿場、開田高原、JR木曽福島駅などが上位を占めた。
検討会の座長を務める信州大学教育学部教授の石沢孝さんは「名古屋への直通バスがあるのに、JR木曽福島駅を利用する人がいる。ビジネス的な利用は十分にある」とみる。
一方、木曽は「利用してみたい」というニーズが48・2%で、「全く利用しない」の9・3%を大きく上回った。買い物、観光・保養、娯楽、通院などの利用ニーズが多かった。
料金設定は、いずれも500円縲恊迚~程度に集中している。
また、伊那・木曽を訪れた観光客の伊那竏猪リ曽間の連絡バス利用のニーズは約3割だった。利用する条件に▽運行本数が多ければ▽時間帯が合えば▽料金が安ければ竏窒ネどが挙がった。
今後、公共交通、観光交通、利用者らの現状や問題点をヒアリング調査し、新市の総合的な交通体系の基本方針をまとめる。
タクシー業界では、開通前に全くなかった木曽行きの利用が目立つ。
伊那市街地からJR木曽福島駅までのタクシー所要時間は約40分で、料金は9千円ほど。岡谷市まで行ける距離という。
伊那タクシーは月に数十件、木曽方面へ出向いている。JR木曽福島駅の送り迎えをはじめ、仕事や飲み会(週末)の帰りなどに利用する人が目立つという。夏場には観光を目的とした利用もあり「恩恵を受けている」という。
白川タクシーは月に数件で、JR木曽福島駅の活用がほとんど。地域住民が「近くなった木曽に行ってみるか」と奈良井宿や開田高原を観光で回るケースもあった。
今後の見通しについて「劇的に増えることはないだろう」と予測するが、花見の時期、高遠城址公園を訪れた観光客が立ち寄る一つの選択肢になると期待する。
木曽の情報は、観光パンフレット程度しかなく、ドライバーは実際に回って見た情報を交換している。
現状では、定期便の運行には至らないようだ。
昨年2月の開通後から、伊那バスは権兵衛トンネル開通記念としてバスツアーを企画。「トンネルを経由したコース設定は需要がある」といい、人気は高い。
これまで木曽の各所を見学する「木曽馬の里縲恁茆ヤ明神温泉」、トンネルを経由する「美しい上高地紅葉ツアー」など4コースが終了。地元を中心に、約1500人が利用し、関心の高さをうかがわせた。
7日からは「昼神温泉ツアー」がスタート。また、木曽見学として御嶽山周辺を組み入れている。