多彩な花色、咲き方で「はまる」面白さ
クリスマスローズ
うつむき加減に咲く花はバラ(ローズ)というには余りにつつましく、そそと咲く風情はシャクヤク(和名寒シャクヤク)にも似ず、可れん。
耐寒性に優れた常緑宿根草で和風の庭にも洋風庭園にも合う。花の少ない冬から早春に咲き、5月まで楽しめる。
キンポウゲ科の多年草で、原産地はヨーロッパ、特にバルカン地方に多くの原種が見られる。
数種の原種同士の人為的交配により、オリエンタリス系が登場。以後、自然交雑や交配により、花色は白、桃、紅、黄色、緑から黒までと、無数の中間色がある。咲き方も一重から八重、セミダブル(アネモネ咲き)。花の模様も無地から、スポットのあるもの、固まってあるもの、編模様、覆輪と多彩。花色と花の模様、咲き方の組み合わせで花の種類は無限。1度栽培したら「はまる」面白さ。清楚な美しさに引かれ、5千鉢を育てる宮沢繁夫さん(飯島町鳥居原)、洋風庭園で百株余を咲かせる中城澄子さん(駒ケ根市北割1区)、地元産からメリクロンの最新品種までそろえるグリーンファーム(伊那市ますみケ原)で取材させていただいた(大口国江)
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鑑賞期間が長く、自然交配で色々な花が出るのが魅力、宮沢繁夫さん
「花弁に見えるのは実はがくで、花弁は退化し、密腺となっている。がくは数カ月も散らないため、長く楽しめる」。
飯島町鳥居原の宮沢繁夫さんの140坪のハウスでは、純白から濃赤までオリエンタリス系のクリスマスローズ約5千鉢余が咲き始め、3、4個開いた鉢から、枯れ葉を取り、雑草を抜くなど、出荷作業に追われている。
宮沢さんは昨年末に出荷が終わるシクラメンの後作にと、10年前にオリエンタリス系を導入した。
11月初旬に自家採取の種を箱まき。翌年4月本葉2、3枚で9センチポットに移植。翌々年1月15センチの鉢に植え出荷する。3年がかりの時間の掛かる花だが「年末までは戸外で、シクラメンの出荷が終わった後、ハウスに取りこむ。燃料費も手間も余り掛からない」。耐寒性はあるが、夏の暑さに弱いとか。
「自然交配でいろいろな花が咲き、派手ではないが、魅力的な花。庭があれば、落葉樹の根元に植えておくと、大株になり、管理も楽」と話す。
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オリエンタリス系や有茎種など百株余を育てる中城澄子さん
駒ケ根市北割の五十鈴神社近くで手づくりガーデン喫茶「プチ」を営む中城さんもクリスマスローズにはまっている1人。「高齢になって、手が掛かるバラが作れなくなったら、庭一面にクリスマスローズを植えたい」。
10数年前、庭を手作りした時に数株植えたた。繁殖力が旺盛で、日陰でもよく育ち、花弁が丸く、白から赤、緑、神秘的な黒まで色彩豊かなオリエンタリス系が早春から次々と咲く。
また、太い茎が50センチ以上伸び、緑色の小さな花が葉の上で群がって咲く有茎種(木立性)の「ファヌチス」も数株あり、雪の中でも元気、不思議な景色を作っている。
「ほかの花の邪魔にならず、ほっといても頑張っている。種が落ちてどんどん増える。花のない冬期間ずっと咲き続けている」とすっかり気に入っている。
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花色豊富、咲き方も多彩、最新花も並ぶ、グリーンファーム
伊那市ますみケ丘の産直市場、グリーンファームでは、地元の農家が出荷したオリエンタリス系の多彩な花が並んでいる。白からピンク、濃い赤、グリーン系など様々な色、咲き方も一重やセミダブル、八重と多彩。
また、市場仕入れのメリクロンの最新花、真紅の「ペギーパラード」、オレンジ系の「テリックスミティーII」など大輪で鮮やかな花色の種類や、灰緑色の葉がシックな有茎種「アーグチフェリス」など珍しい種類も並び、目を楽しませてくれる。
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こぼれ話
クリスマスローズの名の由来はクリスマスの頃咲くバラのような花の意味、ノイガー(ニゲル)のように名前の通り、12月末ころ咲く原種もある。
古代ギリシャ時代には根は狂気を治す霊薬の1つと信じられ、花言葉は「私の不安を救いたまえ」。
また、「幼子イエスを祝福する花」とも呼ばれる。これは貧しい羊飼いの少女が、天使の助けで、雪の中に咲く、この花を摘み、神の子イエスに贈ったという伝説から。
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