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アルストロメリア

上伊那は全国5割を生産、日本1の産地

アルストロメリア

 標高3千メートル、アンデスの山ろくに自生するインカのユリ、アルストロメリア。ユリのように可れんで、ランのように華やか。
 アルストロメリア科、アルストロメリア属の宿根草で、短縮してメリアとも言う。近年の洋花嗜好にマッチし人気は高い。花の色は白、赤、ピンク、紫、オレンジと多彩。花弁に模様(スポット)があるのが多いが、スポットレスもある。葉が180度ねじれていることや、花持ちの良さ(冬場で1カ月、夏でも10日以上)もこの花の特長。
 オランダで栽培種として、品種改良され、箕輪町に根付いたのが1979年、翌年、県経済連が推奨し、上伊那全域に普及した。現在、全国シェア5割、約百軒が百品種、1300万本を関東、関西に出荷する全国1の産地である。花のピークは春の3-5月だが、地中冷房システムの普及で1年中切れる、経済性高く、切り花のホープである。今回は年間60万本を出荷する伊那市美篶の末広農園の春日照夫さん(74)、飯島町七久保の道の駅「花の里いいじま」で花狩りができる観光農園を営む宮下善夫さん(56)、上伊那のメリアを販売面でサポートするJA上伊那花卉課の吉沢栄二さんにお聞きした(大口国江)
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「借金花」だからこそ、作り続け、ようやく理想の経営に、春日照夫さん
 「初期投資が大きく、途中で止めたら、借金だけが残る。止めるに止められず、27年作り続けて、ようやく、理想的な経営と生活が実現した」。
 昭和50年代、野菜に代わる経済性の高い作物をと模索する春日さんに、上伊那農業改良普及所職員が「10アールで10万本切れ、1本百円で売れ、1千万円になる花がある」と耳よりな話を持ち込んだ。「話し半分でもすごい」と飛びつき、大胆にも花も見ずに仲間を募り、JAから融資を受け、トマトハウスを利用し、赤を主体にオランダ・パテント苗300株を導入した。
 「わからないことばかりで、勉強しようにも、指導員もいない」と、全てが手探り、2年目に開花したが、販売ルートもなければ、テクニックもない。借金ばかり増え「借金花」というあり難くない「異名」を頂戴した。「止めると借金だけが残る。止めるわけには行かない。がむしゃらに進むしか無かった」。品種を替えたり、栽培法も研究し、稲作で経営を補完しながら軌道に乗るまでに5年がかかった。85年から91年頃まで比較的安定し、バブルが崩壊した92年に、2500万円の設備投資でハウスの鉄骨化と、根元にチューブを埋め、冷却水を流して地中の温度を下げて、花芽の分化を促進させる地中冷房システムを導入し、通年生産に踏みきった。
 上伊那の5農協が上伊那農協として合併されたのを機に、アルストロメリア部会も統一「合併により、出荷量が増大し、上伊那のメリアは確固たる地位を築き、品種の選定は市場主導でなく、産地主導で行なわれるほどになった」。
 さらに、4年前にJA上伊那が開発した、水に挿して運ぶ湿式の輸送ケースでの出荷に切り替えたことで、品質は向上、ボリウムアップし、裾もの(格外品)まで市場でさばけ、産地間競争を有利に展開できるようになったという。
 「30年かかって、10アールで1千万円の売上が正夢になろうとしている。『借金花』だったからこそ、この花を作り続け、夢を実現できた。赤字経営の人もいるし、末広農園も今は順調でも、ちょっと油断すれば、命取りになる」と話した。
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 原種栽培から観光農園へ、宮下善夫さん
 飯島町の道の駅「花の里いいじま」には、メリアの全自動ハウスが2棟あり、上伊那では唯一、1年中花狩りができる。
 2棟20アールの温室で覆色の「レベッカ」、黄色の「アモール」白の「オリガ」「クリスタル」、ピンク系の「サクラ」「スィートフェネッセ」など8種類を栽培、1本150円で最高品質の花が自由に摘み取れる。根元に湿したペーパータオルを巻くなど長時間の持ち帰りサービスもある。
 宮下さんは75年、上伊那では最も早く導入した。千葉県の園芸農家で春、1季咲きの原種の「リグツ」を一目見て「かわいい花、色もいい」とすっかりほれこみ、2百株を作付け、4年ほど原種を栽培した。80年から、オランダのパテント苗に切り替えた。5年前、道の駅開設に合わせ、ハウスを建設し、花狩りを始めた。
 「花狩りはつぼみよりも、1、2輪咲いたものの方が発色がいい」という。
 次々と新品種が誕生し、品種のくせを周知し、コントロールするには技術がいる。自動で温度管理、潅水、カーテンの開閉など重装備したハウスでも、天候に左右される。「お天道様には勝てない」と苦笑する。
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産地を販売面で支えるJA上伊那営農部花卉課、吉沢栄二さん
 「メリアの課題はパテント苗は1株2000円と高く、燃料費の高騰が経営を圧迫している。品種の選定も難しい」。
 JA上伊那のメリアは約百種類、ピンク系が6割、冠婚葬祭に欠かせない白と黄色が1・5割、紫や赤など濃い色は少ない。市場で評判がいいと、どっと同品種を栽培し、価格が下落したという苦い経験から、農家と相談しながら、JA上伊那全体で品種の調整をしているという。
 「1300万本売り抜くのが使命。そのために、都会のスーパーやホームセンター、デパートなどで店頭販売し、消費者にこの花を知ってもらう努力をしている」。
 花の名はスェーデンのアルストロエマーという植物学者の名前から。「かつて、経済連では親しみやすい名前にと『夢ゆり草』と名付け、レコードまで出してPRしたが:」と、ほこりをかぶった古いレコードを見せる。
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 昔は「借金花」、今は夢ゆり、日本人好みのサクラ色、緑の花、丸弁など新しい花が次々とデビューする。低草丈でコンパクトな鉢植え用、芳香性の品種もあり、まだまだ期待される花、ちなみに花言葉は「未来への憧れ」
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(11)道の駅では直売もしています

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