原隆子さん、
駒ケ根市赤穂中割
「プリンスエドワード島のマックさんの工場の原毛は最高、手にしっとりとなじむ」と、原毛を手にうっとり。
羊の原毛をつむぎ器に掛け、丁寧に紡いで毛糸を作る。毛糸は草木染で好みの色に染め上げ、1、2年、色が落ち着くまで放置する。「染め上がった時の色と時間が経ったものとは、全く違う色合いになる」。この後、一目一目、手で編んでセーターやベストにする。1つの作品を製作するのに3年から4年も掛かるとか。
20年前、JAの講座でサフォーク羊の原毛から紡いで毛糸を作る技術を習った。草木染は資料で勉強し、ススキやクズ、スズランと色々試した。
サフォークの毛はごわごわと、手触りが悪いため、毛質が柔らかな白のメリメに切り替えた。原毛からの紡ぎは、想像以上に難しく、最初は太かったり、細かったりと、でき上がりは不ぞろい。思う通りの太さに調節できるようになるまでに10年掛かったとか。
また、同じ場所で同時期に採取した同じ材料を使っても染め上がりが異なる、「何度染めても、染め上がりにワクワクする」。ドクダミやアキノキリンソウで染めた、けばけばしい黄色が半年経ち、1年経過し、しっとりと落ち着いた色に変って行く、その変化が楽しいとか。「草木染は本当に奥が深い」。萌えるような緑を出そうと、何度も挑戦し、3年前、タンポポの茎や葉を使い、自分のイメージ通り「快心の緑」を染め上げ、セーターに編んだという。
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少女の頃から「赤毛のアン」の世界にどっぷりと浸かり、吉村和敏の写真集「プリンスエドワード島」に触発され、プリンスエドワード島は憧れの島、いつかは行きたいという思いを強くし、いろいろ勉強した。この中で国内最高と言われる「マックさんの原毛」を知り、昨年7月、単身、アンの島に向けて旅だった、初めての海外旅行だった。
マックさんの工場は原毛から毛糸、毛布を製造するまで、工程ごとに独立した建物のため、1日がかりで、気に入った原毛を探し、見つけ、注文した。
島では、ベッドからベッドカバー、窓枠、テラスに至るまでオール「赤毛のアン」をイメージしたB&B(朝食付きの宿泊施設)に2週間滞在した。その間、ロブスター猟師と友だちになったり、無農薬栽培の農家も見学した。観光コースにないミニマクインディアンの集落にも足を伸ばし、特別に儀式の部屋やかごづくりも見せてもらった。
重度障害者のグループホームにも立ち寄り、自閉症の子どもたちと触れ合った。「自閉の子どもたちは大好き。言葉はいらない、しばらく一緒にいると仲良くなれる」とか。
スタッフの「こうした施設は改善を要求していかないと、条件が悪くなる」という言葉に「ここでは障害者は1人の人間として認められ、老人も尊敬されている」と、日本の現状と比べ、ショックを受けたとか。
現在、4月22日、伊那市西春近の法音寺で開く初のグループ展への出品に向け、「着る人の笑顔を思い浮かべながら、糸を紡ぎ、一目一目編み上げていくのが至福のひととき」と作品づくりの熱中している。
1人暮らし。