県議選 あす告示
任期満了に伴う県議選は30日、告示される。立候補予定者は伊那市区、駒ケ根市区、郡区でいずれも定数を超え、選挙戦は確実となった。投票は4月8日。(文中、現職・前職、五十音順、丸数字は当選回数)
立候補予定者は、伊那市区(定数2)が現職の木下茂人(71)=無所属(3)・美篶、向山公人(64)=政信会(2)・西町、新人の井口純代(51)=あおぞら・福島=の3氏。
駒ケ根市区(定数1)は、現職林奉文(61)=あおぞら(1)・南割、前職佐々木祥二(55)=無所属・赤須東=の2氏。
上伊那郡区(定数2)は、現職の小原勇(58)=無所属(1)・宮田村、小林伸陽(63)=共産党(2)・箕輪町、清水洋(53)=自民党(1)・箕輪町、前職の垣内基良(57)=無所属・辰野町=の4氏となっている。
伊那市区
新人・井口純代氏の突然の出馬表明により、選挙戦に突入することとなった伊那市区(定数2)。すでに出馬を表明している現職の木下茂人氏、同じく現職の向山公人氏とも、選挙戦を見込んだ準備を進めてきたものの、無投票への見方も強まっていただけに驚きの表情を見せるが、早い段階から支持基盤固めを進めてきた現職2氏に対し、スタートの遅れた新人候補には厳しい選挙戦になることが確実だ。
しかし、田中前知事批判の現職2氏対し、井口氏は田中前知事の政策を支持する唯一の対立候補。4年前の戦いでは現職批判の新人2人が票を分け合い、現職2氏に及ばなかったが、2人の票の合計(約1万2千表)は現職一人ひとりの得票数を2千票ほど上回っていた。新人の井口氏が、現職2氏の集められない票をどこまで抑えられるかが今選挙選の勝敗を分ける。
現職2氏にとっては今回から伊那市区に加わった高遠、長谷地区の票を固めることが、重要な鍵となる。
高遠、長谷地区の有権者は約8千人。そのうち前回の投票者数は約6千人だった。高遠、長谷地区とも保守色が強いこともあり、現職2氏には有利な地域とも言える。実際に両氏とも高遠、長谷地区で行ったあいさつ回りの感触は悪くなく、支部組織を設けるなどして支持基盤を固めている。
農業を地盤とする木下氏は、農業振興や産業振興を訴えて高遠、長谷地区の支持固めを進めている。また、出身地である美篶地区とは地縁的なつながりも深い。
向山陣営では、前回選のような風は吹いていないとしながらも、「厳しい選挙になる」と気を引き締める。しかし、こちらも商工関係者を中心として高遠、長谷地区の支持基盤が固まってきている。
出遅れた井口氏にとっては短期決戦。これまで関わってきた市民活動のネットワークを生かして支持者集めを進めていくが、準備不足は否めない。得票数の目標は昨年8月の知事選における田中氏の得票数1万8200を一つの目安にしている。
伊那市区でも、現職を支持しない潜在票が相当数ある。しかし、今回選では無投票が前回より増えるという見方もあり、そうなれば新人候補が票を確保するのは難しい。
駒ケ根市区
駒ケ根市区(定数1)で立候補を表明しているのは現職の林奉文氏と、前職の佐々木祥二氏の2人。これまでのところほかに出馬の動きはなく、4年前の前回選と同じ顔ぶれで攻守所を変えての激しい一騎打ちとなることが確実な情勢だ。30日には両陣営とも立候補の届出を済ませた後、林氏は午前9時にJR駒ケ根駅前広場で、佐々木氏は同8時30分に選挙事務所でそれぞれ出陣式を行う。
最大の争点となっているのは田中前知事と方向性の大きく異なる村井知事の政策に対する是非についてだ。林氏は「浅川の穴開きダム建設をはじめとする無駄な公共事業はやめ、福祉、教育、環境などへの取り組みにもっと力を入れるべき」と村井県政を強く批判し、一方の佐々木氏は「村井知事は政治のプロ。予算編成も政策も田中氏の時とは全然違い、バランスが取れている。私の考えと同じだ」と明確に支持を表明。田中前知事の政策をめぐって争った前回選と互いの立場こそ違え、対決の構図はまったく変わっていない。
田中前知事の政策に賛同する市民や共産党系の団体などの支持を集める林氏と、宮下一郎代議士や中原正純市長など保守系からの支持を受ける佐々木氏。両陣営とも前回選を戦った経験と反省を生かして各地区で戸別訪問、ミニ集会、女性集会などを展開してきたが、村井知事の支持率が得票にどう反映するのか、若者を中心とする浮動票がどう動くのかなどの不確定要素が多く、選挙戦の行方は混沌としている。
林氏は「知事選で村井氏に投票した人の中からも改革の後戻りを心配する声が多く聞かれようになってきた。田中前知事が進めた改革を絶対に後戻りさせないことがこれからの私の仕事。知事の交代で4年前と情勢は変わったが、だからといって相手陣営の追い風になっているとは思わない」と田中改革路線の継続を訴える。
前回、県議会で反田中の姿勢を示したことが足かせとなって落選を喫した佐々木氏はこの4年間を振り返り「地域のことにじっくりと向かい合うことができたのは貴重な収穫。住民の暮らしの足元を見直すまたとない機会となった」と心機一転の出直しを図る。「暮らしの向上のためにはまず収入を確保するべきだが、田中氏はそれをやらなかった。今こそ村井知事の経済振興施策を応援しよう」と訴える。
上伊那郡区
上伊那郡区は、定数2に対して4人が出馬する。県内でも大激戦区。
各陣営とも「だれが当選しても、だれが落選してもおかしくない」と接戦を予想し、獲得目標を1万3千票前後に設定する。不出馬を表明した辰野町の赤羽公彦氏が前回(03年4月)獲得した8400票をどれだけ取り込めるかがポイント。各町村で4候補が入り乱れ、票読みを難しくしている。
小原氏は、地元宮田村を含む南部で9千票の獲得が目標。立候補予定者がいない南箕輪村、辰野町の赤羽票をどれだけ取れるかにかかっている。
南部から何としても県議を送り出したいと「郡民益」を訴える。
垣内氏は、辰野町内で立候補予定者が1人に絞られたことで、8500~9千票をまとめ、他町村から5300票の上乗せを図る。
辰野一本化まで至っておらず「辰野から県議を再び」を合言葉に、前回の1票差での落選をばねに、支持を拡大する。
2人が出馬する箕輪町。
小林氏は、前回の獲得票(11051票)の1・5倍以上と目標を高めに掲げ、党派を超えた支持に期待する。地元をはじめ、全体をかさ上げ。辰野町からも前回の2倍、2千票余の獲得を目指す。
清水氏は「町内から2人が当選するのは難しい」と危機感を持つ。前回選挙でトップ当選を果たしたが、南部の獲得票が4人の中で最も少なく、北部で票を上乗せする必要がある。地元の箕輪町内で最低8千票を固めたいとする。
出馬表明から、4候補は息つく暇もなく票獲得に必死。「油断したり、緩みが出たら、危ない」と攻めの姿勢を見せる。