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林公明さん(80

お陣屋コヒガン桜の苗木育成、無料提供する、平成の花咲かじいさん

林公明さん(80

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 「桜はパッと咲いて、パッと散る、日本人に心情にマッチする」-。飯島町のコヒガン桜の古木を親木に、2千本余のコヒガン桜の苗木を育成し、町内の千人塚公園や与田切公園、七久保保育園、アグリネーチャーいいじま、道の駅本郷、藤巻川沿いなどに植え、花の季節には、多くの人に愛でられている。
 23年前、肝臓ガンで大手術を受け、生死の境をさ迷った。「獣に襲われたり、底無し沼に足を取られるなど恐ろしい幻覚症状が現れ、地獄のような10日間を過ごした。夢現の中で、桜の花が満開のお寺の中から仏様が現れ『今の世に間に合わなくとも、後世に残る仕事をせよ』というお告げがあった」という。 死の淵から奇跡的に回復し、健康を取り戻し、全国の仏教美術を訪ねる「シャラの会」に入り、主に、国宝級の仏像、建造物を中心に、全国400カ寺を巡った。また、御仏との約束を果たそうと、20年前から、町内の色が良い、コヒガン桜の古木の枝をもらい受け、挿し木をした。最初の年は50本成功し、3年目には1メートル余に成長、千人塚公園に植栽した。以後、毎年100本、多い年は300本挿した。「挿し木のコツも分かり、80%成功するようになった」。
 6縲・月に5センチの新梢を挿し、10月にポット上げ、翌年畑で育成し、3年目で1メートル余に生育し、定植する。
 林さんが育苗したコヒガン桜はだれ言うともなく「お陣屋コヒガン桜」の名前ですっかり定着した。
 また、飯島小学校のソメイヨシノの古木「見守り桜」の苗も育て、転退職する教諭らに飯島町の記念にと贈っている。
 おかめ、しだれ、八重、ウコン桜など様々の桜の挿し木に挑戦した。挿し木だけでなく、旅先で拾ったサクランボをまき、実生からも育てる「どんな花が咲くか楽しみ」と笑顔を向ける。
 桜の苗は町内ばかりでなく、飯島町と友好提携している奈良県斑鳩町に21世紀を記念し、2000年に21本植栽し、3年間手入れに通った。「作業中、法隆寺の鐘がゴーンと聞こえ、感動的だった」。愛知県の知人、「日本桜の会」を通じて、岡崎県吉良町の花岳寺にも贈った。さらに、数年前、フランスのパリで日本料理店を営む、町出身の芦部巧さんの依頼でパリにも。昨年、来町した芦部さんから、パリの桜の写真を見せてもらい「しっかりとパリに根付き、大きくなった」と感無量だったとか。
 苗を無料提供し、桜の木の保護育成活動、桜を通じて国際親善の取り組みは高く評価され、「長野県桜の会」から表彰された。
 昨年は花の季節に町内に植栽した桜を見て回った。「大きくなったが、まだ幼木。藤巻川沿いはきれいだった。桜守ばかりでなく、千人塚の桜守ファミリーなど、みんなで桜を守ろうという気運が盛り上がっていることが一番うれしい」と平成の花咲かじいさんはにっこり。
 妻と長男夫婦の4人暮らし。

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