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【駒ケ根太鼓指導者 中坪兼吉さん】

駒ケ根市飯坂

【駒ケ根太鼓指導者 中坪兼吉さん】

 約40年前、東京に住む駒ケ根出身者の会が郷土への思いを込めて市に大太鼓2張り、締太鼓3張りを寄贈してくれた。その好意を生かそうと青年会が市民に呼び掛けて発足した駒ケ根太鼓に当初からかかわってきた。
 「その時まで太鼓を打ったことなんてまったくなかった。ほかの人たちもみんな似たり寄ったりだったよ」
 そこで短期間に技を身につけようと著名な邦楽師杵屋佐三造氏に指導を依頼したところ快諾を得た。喜んだのもつかの間「何しろこっちは初めてなんだから竏窒ニ思っていたが、いきなり遠慮なく本格的に教えられてまいったよ。厳しいけいこを朝から夜までぶっ通しだ。しかも1週間泊まっていったからね…。もっともそのおかげで今の駒ケ根太鼓があるんだ」。
 その後、駒ケ根太鼓は観光イベントに、成人式などの行事に、各地の祭りに竏窒ニ市の顔として定着。全国大会に出場して好成績を収めたり、親善大使として中国やフィンランドなどを訪れたほか、長野オリンピックや国体の開会式でも勇壮な演奏を披露してきた。
 ◇ ◇
 地元の小・中学生の指導にも力を入れている。特に赤穂中学校に対しては、2年生を卒業までの2年間かけて指導して7年目。月2、3回の指導では昼を挟んで4時間みっちりけいこをつけ、夏休みには2日間の合宿も行う。
 「最初は本当に手取り足取りだが、若いだけあって覚えも早く、半年で1、2曲は打てるようになる。まあ、きつく言うこともあるし、倒れるぐらいしごくこともしごくがね。反抗期真っ盛りだが、みんな素直だよ」
 努力の総決算である文化祭での発表では40人が心を一つにして打つ。その豪壮さは素晴らしく、見詰める保護者らはこみ上げる感動で涙するという。
 「みんなが泣くんだよ。うちの子があんなに打てるようになったのか竏窒チてね。実は自分も思わず涙が出るんだ。太鼓は一つの音に聞こえないといけない、心を合わせて打つ気持ちが大切だ、と教えてきたことがこうしてしっかり伝わったと思うとね。自分も子どもたちから大きなパワーをもらっていることがありがたい」
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 太鼓はもとより、笛や神楽にも精通する。
 「全部できる人は駒ケ根太鼓の中にもほとんどいない。だから誰かが習って伝承していかなければいけないと思ってね。中でも難しいのは神楽の舞だな。光前寺の霊犬早太郎の物語『早太郎神楽』ではヒヒを舞うんだが、これがまた大変なんだよ。まあ自分で思うよりも年だからね。これからは後継者を育てていきたいな」
 (白鳥文男)

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