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天竜川で友釣り50年
南箕輪村 有賀章治さん(57)

人を引っ張る淡水魚はアユだけだよ

天竜川で友釣り50年<br>南箕輪村 有賀章治さん(57)

 「俺はしんにょうのつく方のメイジンだよ」
 伊那市内の天竜川で笑いながら話す。スポーティなフィッシングスーツに身を固めた姿は、一見10歳ほど若く見える。真っ黒に陽に焼けた顔が印象的だ。<br> 南箕輪村生まれ。小学校低学年の頃から、隣りに住んでいた「本物の名人」に連れられ、アユの友釣りを始めた。以来約50年。南箕輪村から伊那市中央区の大橋付近までをホームグラウンドにして、毎年アユを追いつづけてきた。今では近隣のアユ釣師のリーダー役だ。<br> 7月1日解禁、秋口までのシーズンで、約20縲・0日位は川に来る。「なんだ仕事してないのかと言われちゃうよ」と笑うが、本業は船舶用のターボチャージャーを造るみのわ精工の社長。多忙な毎日の中で時間を工面して土日のアユ釣りの時間を確保しているのだという。<br> 友釣りは、周りに針を配した「おとり」のアユを、岩陰や淵にそっと送り込み、「おとり」に体をぶつけてくるアユを引っ掛ける。水中にテリトリー(縄張り)を持ち、それを侵犯する他のアユを追い出す窶狽ニいうアユの習性を利用した、世界でも他に類例を見ない釣りだ。<br> 「親(おとりのこと)をテリトリーに入れる時の駆け引き。掛かった時の強い引き。この爽快感は1回やれば止められないよ。人を流れに引き込むほどの強い引きをする淡水魚はアユだけだと思うな」<br> 今までの最大の釣果は1日100匹以上。<br> 1970年頃に、諏訪湖からアオコが大量に流れ出し、天竜川の川底がヘドロで埋められた時期があった。「もう天竜のアユはおしまいだ」と感じ、岐阜県にまで釣り場を求めて出かけたこともあったという。<br> 「でも、やっぱりホームグラウンドは天竜川なんだよ。あの頃に比べれば雲泥の差ほど川は綺麗になった。でも、俺が始めた頃の綺麗さから比べればまだまださぁ」<br> 川の汚れは釣り人の減少として如実に現れているという。特に、若い世代でアユ釣りを始める人が極端に少なくなっている。<br> 「川が綺麗だと、釣りをする人が増え、その家族が川に集まる。それで、ますます川を綺麗にしようという気運が広がると思うんだよ」。そういう循環がこれから始まっていけばと願っている。<br> 釣り好きが昂じて、釣りの道具作りにもはまっている。腰につけたタモ(魚をすくう網)は、取っ手の部分を鹿の角で作ったお気に入りの逸品。掛けたアユを入れ、流れに浮かべる「曳舟」という道具も自分で作った。釣り仲間にも色々とプレゼントしている。<br> 「休みといえば、夏場は川に出っ放し。冬場は日がな一日道具作り。女房は、随分前に呆れ返って、もう何も言ってくれないよ」<br> 水面からはね返った光が、キラキラと笑顔を照らした。<br>

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