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茶業コンサルタント
箕輪町
増沢武雄さん

茶業コンサルタント<br>箕輪町<br>増沢武雄さん

 「お茶の道一本やりで、技術をずっとやってきた。それを誇りとしている。目線は幅広く農業を勉強しながら、農業問題全般の中のお茶を考えてきた」
 箕輪町大出出身。東京農大短大農学部を卒業し、59年に静岡県職員になった。静岡県東部農林事務所に製茶指導吏員として勤務したが、最初は茶の基礎知識は無かった。「茶と言ったら『茶々を入れる』くらいしか知らなかった。国や県の茶業試験場や熱心な茶農家を訪ね、現場で茶の生産について勉強した」。中国やスリランカ、台湾など海外の茶の試験研究機関や茶産地でも学んだ。「これらの勉強がとても参考になり役立っている」という。
 後に日大経済学部を卒業。県経済部農産課で茶の生産奨励事業を担当し、69年から茶業試験場で製茶加工および茶の仕上げ加工、 茶の包装貯蔵、品質鑑定などを受け持った。茶業試験場富士分場長を務め退職。その後JA静岡経済連に茶技術コンサルタントとして7年勤務した。現在はNPO法人日本食茶の会副理事長、NPO法人日本茶インストラクター協会試験委員。06年4月故郷に戻ったが、静岡や東京に出向いて茶の指導をする日々が続いている。
 「常識や既成概念を突き破らないと新しいものは生まれない。新しい時代に合ったお茶の飲み方、利用の仕方をしないと進まない」
 試験場では、農家が困っていることを解決する。問題点にぶつかって答えを見い出す。その繰り返しだった。
 「まともに見るのではなく、15度、90度、上から、下から見る。これが本当にいいの?と疑いを持つ。理論的裏づけがないと否定する。流れの中でやってはいけない。ぼくはひねくれてるのかな。決めつけでなく、ちょっと腑に落ちないところがあれば、考えながらやらないといけないと思うんですね」。既成を白紙にして今何を求めているのかを考え、新しく作り出す、新しい方向に筋道をつける。技術者としての信念だ。
 農林大学校の非常勤講師として学生も指導してきた。「本当は農業が一番難しい。気象学、自然科学、経済、法律などを考えないといけない」。後継者養成で茶の基本的な技術指導と同時に、幅広い勉強の必要性も説き、年間100人近い学生を卒業させた。
 消費者に関心を持ってもらうため茶摘体験も開き、富士山が見える茶園に消費者に来てもらい、生産現場を理解してもらうなど、きめ細かな農業にも取り組む。
 後継者育成の一環で小さいころから茶に関心を持ってもらうため、農山漁村文化協会発行の手づくり加工絵本シリーズ「つくってあそぼう」の『茶の絵本』の編者でもある。
 50年ぶりに戻った箕輪町。「浦島太郎ですよ。この地の農家の人の話を聞いたりしながら、伊那谷の農業を今は勉強中ですね。この地でもいかにお茶を飲んでもらうかが使命だと思ってます。生きて動ける以上はやってみたい。お茶しか能がないから」。(村上裕子)

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