【駒ケ根市ポルトガル語通訳員 清水真里さん】
駒ケ根市北割一区
駒ケ根市には約千人の外国人が住んでいるが、そのうち半数以上がポルトガル語を公用語とするブラジル人だ。ポルトガル語の必要度が高まる中、日本語の読み書きや会話が十分にできない外国人の行政相談などに対応するため駒ケ根市が今年度初めて設置した外国人相談窓口で、ポルトガル語の通訳員として週1回の業務に当たっている。
「まだ慣れないので専門的な行政用語に戸惑うこともあります。でも困っている外国人の役に立てるよう、できるだけ分かりやすく伝えることが私の仕事。少しでも喜んでもらえるようにしっかり取り組みたい」
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愛媛県松山市出身。もともと英語が好きだったが、ほかの言語も学びたいと考えて大学ではスペイン語を専攻した。卒業後、一時郷里に帰っていた時に、移民としてブラジルに渡りサンパウロで針きゅうクリニックを開いている日系人と知り合った。友達になった彼に、ブラジルはとても良い国だよ、一度見に来ないか竏窒ニ勧められて心が動いた。
「それまで欧州や米国に旅行したことはあったが、南米には特に興味はなかった。でも彼の熱心な言葉を聞くうちに、行ってみたいという気になったんです」
サンパウロには日系人が多く住んでいる。日本人街にはひらがなや漢字が書かれた看板もたくさんあって不思議な気がした。それまでポルトガル語は知らなかったが、大学で学んだスペイン語に比較的似ていることもあり、すぐに慣れて自然に話せるようになった。
感心したのは、住んでいる日系人が昔の日本人の良さを受け継いでいることだった。
「礼儀正しさや一生懸命仕事をすることなど、今の日本人が忘れてしまっている大切なことに気付かされました」
たくさんの知り合いができて6カ月間楽しく過ごし「もっと居たかった」がビザの期限が切れるため、帰るしかなかった。
身につけたポルトガル語は思わぬところで役に立つことになった。愛媛県警の部外通訳員が空席となったため、後任の依頼が人づてで舞い込んだ。事件を起こしたブラジル人の被疑者を取り調べる警察官の通訳として年に何回か協力した。
駒ケ根市には、ペルー人の夫が駒ケ根青年海外協力隊の語学講師として赴任したことからこの2月に住み始めたが、市の通訳員の仕事に就いたのも偶然の出来事からだった。たまたま行った図書館でブラジル料理教室開催のチラシが目に止まり「懐かしいな。楽しそう」と参加してみたところ、知り合った主催者団体のメンバーを通じて市から話が来たのだ。
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「駒ケ根は水がおいしいし、空気がきれい。中でもアルプスの山並みはとても美しいですね。四国の山は低いのでなお素晴らしく感じる。夫はアンデスの山の中で育ったから『故郷のようだ』と言って眺めています。ここでずっと暮らせたらいいですね」
(白鳥文男)