古い木材に新たな命を注ぎ込む
伊那市西箕輪
木村深雪さん(58)
大工の夫を手伝いながら、生活家具を中心とした木工製作に取り組んでいる。使用する木材はできる限り地域の気候風土に合った地の材。また、古くなった木材に丁寧にカンナを掛け、別の形で再生する取り組みもしている。
「木は木材となってからも木として生きた分だけ生きるって言われているから、良い板ならカンナをかけ直してあげることでまたそこから10年、20年って使ってあげることができる。この机も古い家の床の間に使われていたクリの木なんですよ」と目の前のテーブルを示す。
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夫とともに東京から伊那へIターンしたのは20年ほど前。その後、夫は伊那技術専門校へ通い、大工として独立。木工に携わるようになったのは、その副産物として、木材の端切れをどうにかしたいと考えたことがきっかけだった。
「最初はそれをたき物にしていたのだけど、『ただ燃してしまうのはもったいない。どうにかできないかな』って考えるようになって」
その後、自身も伊那技専に入学。さまざまな年代の学生と一緒にカンナの研ぎ方から木の性質まで、木工に関する基礎的な知識と技術を習得した。
卒業後は夫の大工仕事を手伝う傍ら、新しい家のキッチンや水周りを設計。女性の目線に立った安全で使い易い設計を心掛けてきた。
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新しい家の建設に携わる一方、古い民家が取り壊される場面に立ち会う機会も増える。しかし、そうした取り壊されようとしている家の中には昔の職人が手掛けた素晴らしい技術や年月を経ても生命力を失わない立派な木材が眠っている事実を知り、それも一緒に取り壊されてしまうことのもったいなさを実感した。
「昔の人の造った家なんか見ると、『すごい!こんなのどうやったの?』って思うようなこともよくある。今は釘を使って打ち込んでいるけど、こういうのを見ると『これでいいのかな』って考える。取り壊される家であっても、その時までその家は生きていたのだから、ただ壊してしまうのはもったいない。命のあるものだからこそ、きちんと使って生かしてあげたい」
今後は、こうした古民家に手を入れて住める状態にする「古民家再生」にも力を入れていきたいと考えている。
古民家再生などに関心のある人はきむら工房(TEL78・1056)へ。