ぎゃらりー喫茶「花鳥四季彩」の井上治さん(57)
野鳥の写真撮影の趣味をきっかけにギャラリー喫茶を06年3月末、自宅の横にオープンした。自然の温かみを感じるロッジ風の室内には、香ばしいコーヒー豆の香りが漂う。この空間が展示作品とお客さんとの対話の時間を演出してくれるのだという。
「自分の作品に合ったギャラリーがほしかった。本格的なギャラリーは立って眺めるだけ。コーヒーを一杯飲みながらゆっくりと鑑賞するのが本来の形だと思う。自分なりに・ス良い・ス方に理解してつくったギャラリーなんです」
撮影でこだわっていることは「レンズを通して見る、その季節の中に生きている野鳥のきれいな姿」。自分の目で感動した瞬間と頭の中のイメージが一致した時、シャッターを切る。
そのために努力は惜しまない。野鳥が活動し始める早朝に出かけることは当然。鳥の種類や習性、季節の花が咲き始める時期と場所などの情報は頭の中に詰め込んだ。好きな鳥と風景を求め、北海道まで行ったことも2度あるという。
野鳥との出合いは12年前だった。東京に住んでいた当時、多摩川沿いを歩いていると、体長17センチほどの小さな鳥が1羽、ヤナギの木の枝に止まっているのを見つけた。そのきれいな青色の羽に気持ちが和んだ。それはカワセミだった。
「仕事にくたびれていた時、名前も分からないコバルトブルーの鳥が目に飛び込んできた。それから、ああいうのを撮ってみたいと思い始めたんです」
初夏は、キビタキ、サンショウクイ、オオルリ、ノジコなど夏の渡り鳥を芽吹きの色と一緒に撮影するのに懸命だ。カメラとレンズ、三脚の計10キロを担ぎ、今日も野鳥を求めて野山を歩く。
「余計なことは考えず、頭の中を空っぽにして自分のイメージを追い続ける。カメラというより、その被写体(野鳥)の魅力に心が癒されています」