伊那市の龍光寺全焼 男性の遺体発見
30日午前4時24分(消防覚知)、伊那市狐島の曹洞宗龍光寺から出火し、同寺本堂及び住宅の木造一部2階建てトタン葺き建物約200平方メートルを全焼するなどし、同5時50分に鎮火した。この火災で一人暮らしの住職木村誠治さん(58)の行方が分からず伊那署は、住宅部の台所から発見した男性の焼死体の身元を確認している。
調べによると、焼死体は、頭を南側へ向け、うつ伏せの状態で発見された。同署は、木村さんが火炎に巻き込まれたものとみて捜査している。
地域住民らによると、木村さんは北海道出身。同市内の曹洞宗常円寺の紹介で、昨年秋から同寺末寺である龍光寺の住職を務めていた。それまでは無住で十数年前までは尼寺だったという。
近くに住む第一発見者の男性によると、出火元は南側の住宅部から。「朝4時15分ころ、外がいつもより明るかったので気づいた。トタン屋根なので窓から火が噴き上がっていた」と降り返る。早朝とあって、この火災で目が覚めた住民も多く一時、周囲は騒然とした。
北山禅師の位牌なども焼失?!
檀家らによると、曹洞宗龍光寺は江戸時代からこの地にあった。同時代、長年諸国修行の旅の末、狐島に定住した僧侶の北山一星大禅師(ほくさんいっせいだいぜんじ)の位牌や経典などの遺品を所蔵していたという。関係者は遺品の焼失を心配している。
同地区の蓮台場(れんだいば)に墓があり、毎年4月に地域住民が供養法会を開くのが風習。雨天で墓前で供養ができない場合は、同寺にある位牌を使うという。本年は、晴天の下、桜の木の下にある墓で執り行った。
北山禅師は、仏の教えを説きながら病人の手当てや縁談をまとめるなど村民に慕われた人物。「叩く鉦の音と読経が聞こえる間は好きな酒をこの竹の管を通して注ぎ入れてくれ」と遺言し、生きながら入棺、1741(元文6)年に74歳の生涯を閉じたという。
炎上する伊那市狐島の龍光寺(写真=地域住民提供)