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伊那市日影
助産師
池上道子さん(51)

伊那市日影<br>助産師<br>池上道子さん(51)

 お産は初めての人なら10時間以上はかかる大仕事。でもそこで、「あなたには産める力があるんだよ。自然に生まれてくるから大丈夫だよ」って言ってあげるのが本当の助産師の仕事だと思うんです竏秩B
 病院の産婦人科に27年間勤務した後、自宅の一角で助産所「ドゥーラえむあい」を開いた。助産所での出産は医療や薬を用いない自然分娩のみが対象。出産時に異常がないようにするためにも、妊娠中の体調管理や不安解消などにも十分気を配り、万全の状態で出産に臨めるようにケア。出産後も、おっぱいや発育などさまざまな面から継続的に母子を支援している。
 「ここならぐちも聞いてあげられるから、食事のケアができていないお母さんがいた時にどうしてそれができないかなどといった細かい状況も聞くことができる。『ちゃんと食べていない』なんて話を聞くと、心配で自分の家で作ったお惣菜を持って訪ねていったりするんです」と語る。
 ◇ ◇
 病院でのお産は清潔を保つためのガウン、マスク、手袋、帽子、ゴーグルが必須だった。また、安全への配慮から、家族であっても幼い子どもはまず出産に立ち会えない。
 衛生、安全面に十分配慮しなければいけないことは理解できる。しかし、もともと出産は自然の現象。これから出産に臨もうとしている女性たちはただでさえ不安を抱えており、家族や助産師の励ましが何よりの活力になる。さらに病院では1日に見なければならないお産の数は日増しに増え、自分の担当した母子がその後どうしているかなど分からない状況。
 もっと一人ひとりのお産としっかり向き合いながら病院の中では手の届かない部分までケアできれば竏秩Bそれが開業を決意したきっかけだった。
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 開業から3年、自宅出産も含めて33人のお産にかかわり、元気な産声を上げる赤ちゃんの姿を見てきたが、赤ちゃんの誕生と同時にそこにいるみんなが涙を流し、感動する姿は変わらなかった。
 「助産師は感激の仕事。この前もお母さんの出産に立ち会った1歳の子が頑張っているお母さんに『ちゃちゃ』っていってお茶を飲ませてあげていた。そういう姿を見るとこっちが感動します。病院にいる時には、死産や奇形で生まれてくる子、具合が悪くて数時間で亡くなっちゃう赤ちゃんも見てきました。でも、医療の手を加えないで自然に生まれ、元気に育っていく赤ちゃんもたくさんいる。『本当の手助けとはなんだろう?』って考えた時に、自然に生まれてくることを後押ししてあげることなんじゃないかなって思った。地域に助産師が増え、連携できる体制を整える中で、お母さんたちにも『お産は自分たちの力でできる』と思ってもらえるようになれば」

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