中国の人々から見た「満州開拓」「青少年義勇軍」
長野県歴史教育者協議会が現地で得た調査研究書を翻訳出版
日本から満州(現中国東北部)へ渡った「開拓移民」たちの現地での不当な行為などについて、中国黒竜江省社会科学院が現地の農民らの証言と研究者の論考でまとめた本格的な調査研究書の日本語翻訳版がこのほど発刊され、話題になっている。宮田村の元中学校教師・唐木達雄さん(73)を代表とする長野県歴史教育者協議会プロジェクトチームが、02年に中国へ渡り、長野県満蒙開拓青少年義勇軍の足跡を現地調査した時に黒竜江省社会科学院の所長から渡された原本を5年がかりで翻訳編集した。唐木さんは「開拓移民は侵略移民だったという実態を中国側から見て記した本格的研究書が日本語に翻訳されたのは国内初では」としている。
翻訳作業は、中国語に堪能な林美緒さん=安曇野市、リンゴ農家=の協力を得て、林さんが日本語訳した内容をプロジェクトチームが順次吟味する形で進められた。
同書は「日本移民調査(日本の移民侵略についての中国農民の証言等)」と「日本移民研究(日本の移民侵略についての論考)」の2章で構成。
「日本移民調査」の章では、現地住民の土地や家屋が開拓団のために強制収用されていく様子や、軍隊・移民による中国人に対する不当な迫害・酷使、中国農民の抵抗などが生々しく証言されている。
「日本移民研究」には「中国農民は日本移民侵略の直接の被害者」「日本移民は・ス加害者・スであると同時に・ス被害者・スである」「ここ数年、日本国内政治の右傾の趨勢により、右翼勢力が活発になっており、この問題においても一部の人によって歴史を歪曲し、是非を混同し、侵略を美化する誤った観点が提出されている。このことに対して注意と批判をしないわけにはいかない」などの記述がある。
同書の内容について唐木さんは「黒竜江省社会科学院は歴史的研究では権威ある機関だが、私たちが現地調査した時に、証言者に直接お会いしたことが記述内容の事実関係の確認に役立っている」「科学院の論考の方法も、住民の証言を日本側の資料と照らし合わせるなど、客観性がある」とする。
先日、同書を読んだという、元青少年義勇軍の男性から唐木さん宅に電話があった。男性は「これまで加害者としての意識をどこかで持ちながらも、当時の仲間とその話をすることはできなかった。この本のおかげで中国側の見方が体系的に理解でき、加害者としての気持ちの整理がついた。当時の仲間たちと本当のことを話し合って死んでいける」と言って感謝した。
唐木さんは「開拓移民や義勇軍は、お国のために仕方のないことだと自分たちに言い聞かせていた。それを否定することは、自分を否定することになる。だからみな、口をつぐんだ。悪いのは関東軍」と同情する。
長野県歴史教育者協議会は1995年にプロジェクトチームをつくり、「義勇軍」の調査・研究に着手。2000年に『満蒙開拓青少年義勇軍と信濃教育会』を刊行し、その中で少年たちを送り出した信濃教育会の教育的責任を問うた。
02年の訪中調査で現地の体験者からの聞き取り、社会科学院研究者との懇談などをし、結果を報告書『中国の人たちは・ス満州開拓団・ス・ス青少年義勇軍・スをどう見ていたか』などにまとめている。
『中国の人々から見た「満州開拓」「青少年義勇軍」』はB5判、156ページ。本体価格1300円。問い合わせ、注文は唐木達雄さん(0265・85・4070)へ。近く書店でも販売する予定。
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「第19回平和のための信州・戦争展」が14縲・6日、駒ケ根市総合文化センターで開かれるが、この「義勇軍」「開拓団」のことも「証言コーナー」で語られる。