桐塑・木彫人形作家 御子柴明実さん 伊那市小沢
人形に魅せられて三十数年。「人生の支えであることは確か」
伊那市の信州高遠美術館ギャラリーで30日まで、人形展を開いている。木彫と桐塑(とうそう)の16点。伝統工芸新作展などで入賞した作品がそろう。
おばあさんが一輪車でハクサイやダイコンを運ぶ「収穫」、子どもが母親に抱きつく「いなびかり」、頭にキツネの面をつけた子どもがジュースの缶を持った「祭りのあと」、手鏡を持ち、髪飾りを直す「粧」など。高遠にちなんだ「だるま市」もある。
繊細な動きや表情などから、その場の情景が伝わってくる。「人形は顔という世界もあるけれど、雰囲気作りを大切にしている。見ている人に、それぞれの雰囲気を味わっていただけたら」と話す。
人形の題材は「母親の姿であったり、祖母であったり、子どもであったり。自分の中にある心のふるさと」。生活の一場面のほか、新潟県中越地震の山古志村の「復興」など時代背景も取り入れる。具象ばかりでなく、感性を生かした作品もあり、いつもフレッシュでいること、無でいることを心がける。
人形との出合いは、近所に住んでいた桐塑人形作家・故原淑子さんとたまたま知り合い、個展を見に行ったことから。人形を見て「不思議な世界だなぁ」と感動し、原さんの元に通い始めた。桐塑は、桐粉とのりを練って作るもので「教えてくださる通り、順に作り上げていく。出来上がると、うれしいばかり。今でこそ、難しさを感じている」
90年からは、木彫を始めた。木材屋から桐を調達したり、古布を買い求めたり。
家事をこなしながら、年間6体ほどを仕上げる。
「一番の悩みは、何を題材にするのか。決まれば、どんどんと手が動く」と時間を忘れるほどに熱中する。「まだまだ未熟。これからです」。ハングリー精神が次の創作意欲につながっている。
1936年、東京都生まれ。日本工芸会正会員のほか、信州美術会、伊那美術会などに所属する。