「ファミリーサポートぐりとぐら」代表駒ケ根市赤須東
仕事でどうしても帰れない時、子どもを連れては行けない用事ができた時、家族に急病人が出た時…。どこの家庭にも必ずあるそんな時に大切な子どもを安心して預けられたら-。
98年、子育ての参考になれば-と駒ケ根市働く婦人の家が開講した保育サービス講習会を受講した主婦らの雑談の中から「ファミリーサポートぐりとぐら」が誕生した。
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「子育てって本当に大変だよね」「誰かに手助けしてほしい時もあるし…」「みんなそうでしょう」「じゃあ私たちでも何かできることがあるんじゃない?」自分たちも毎日子育てに追いまくられている時だったからこそ生まれた助け合いの発想だった。
早速図書館などで託児サービスの実態について調べてみると、既に他府県では同じ考えで多くの団体が活動していることが分かり「助けを求めている家庭がたくさんあるのはどこでも変わらないはず」と確信が持てた。苦労して準備を進め翌年、講習会を受講した保育サポーターの主婦ら17人で「ファミリーサポートぐりとぐら」を発足させ、同時に代表となる。
だがスタートは順風満帆とはいかなかった。「当時は一般家庭でも行政でも子どもを預かるという活動に対する認知度が低く、警戒の目で見られたり、いかがわしい団体と思われたりしました。そういうグループはほかになかったから無理もないという気もしますけどね」市の福祉課にグループの発足と活動への協力を説明に行ったところ、にべもない扱いを受け、悔しさに暮れたこともあった。
何とか活動の趣旨を理解してもらおうと市内の各所にポスターを張り出したりチラシを配ったりしたが、託児の依頼はなかなか来なかった。思うように事が進まないことにいらだち「ずっとこのままだったらどうしよう…。やっぱり私たちでは無理なんだろうか」と気持ちが揺らぎかけたが「そんなことはない。私だって誰かに助けてほしい時はあるんだから」と気をとり直して皆で懸命に活動を続けた。
そうした努力が実り、しばらくすると少しずつ依頼が増え始めた。「どうしようかと困っていたところで本当に助かった」「子どもを丁寧に扱ってくれた」「自宅でも子どもをみてもらえるのがうれしい」託児を依頼した親からの好評の声が口コミで母親らの間に広がるにつれ、活動は徐々に軌道に乗り始める。
初年度の預かり数は延べ140人だったが、グループへの理解が浸透し始めたことから市や社会福祉協議会なども活動に協力してくれるようになり、翌年は730人、翌々年は1300人と依頼は伸び続けた。
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グループの名称「ぐりとぐら」は有名な絵本のタイトルだが「出版社と作者に名前の使用をお願いしたところ、グループの趣旨を理解して快諾してくれました」。絵本に登場する動物たちのように仲良く楽しく子育てを-との思いを胸に、さらに充実した援助活動を目指している。