花ろまん27秋の山野草
美しくもあわれを誘う
「かたわらに秋草の花の語るらく、ほろびしものは懐かしきかな」若山牧水の歌である。秋の終りのこの季節、いつもこの歌を思い出す。七重、八重と花びらを重ね、色紅に咲いたとて、秋草はなぜか、あわれを誘う。美しくも寂しい、それが秋の山野草の身上。今回は春に取材させていただいた、伊那市の伊那食品工業のかんてんぱぱガーデンと、ヒノキオ山野草園(飯島隼人園主)に訪れ、秋のガーデンを見せていただいた。(大口国江)
中見だし
年間20万人が訪れるかんてんぱぱガーデン
半日陰の松林や湿地帯などに、イワシャジンやホトトギス、シュウメイギクなどさまざまの秋の花が見られる。
◆イワシャジン(キキョウ科)鐘形の花は青紫色と白花があり、花の重みでしだれる姿は野趣あふれる。
◆ホトトギス(ユリ科)昔、目の見えない兄は誤解し、優しい弟を殺してしまう。後になって誤解が解け、ホトトギスとなって「弟恋し」と鳴く。鳥のホトトギスの胸の斑模様に花の模様が似ていることから名付けられた。様々な原種や園芸種があるが、現在、ここでは紫色と白花が見られる。
◆シュウメイギク(キンポウゲ科)京都の貴船地方に分布していることから別名貴船菊。日陰の林の中に白の一重やピンクの八重などが咲いている。
◆ヤブラン(ユリ科)ランのような姿でやぶに生えていることから名付けられた。万葉集では「ヤマスゲ」という古名で登場する。全体に控えめで地味な花だが、紫色の花は美しい。
◆ウメバチソウ(ユキノシタ科)白く清楚な花の形が梅鉢の家紋に似ていることから名付けられた。
◆シュウカイドウ(シュウカイドウ科)戸外で越冬できる唯一のベコニア。春咲く花木カイドウに花の色が似ていることから名がついた。左右非対称の花が特徴。
中見だし
10数種類が咲くヒノキオ
伊那市を一望する標高900メートルの里山に展開する山野草園はもう晩秋、ダイモンジソウやジンジソウ、トリカブト、リンドウなどがひっそりと咲いている。
◆ダイモンジソウ(ユキノシタ科)細い5枚の花弁が漢字の「大」の字に見えることから名がついた。原種は白花だが、園芸品種は花の色はピンクから濃い赤まで、咲き方も一重、八重、渦巻き弁など多種多様。簡単に実生で増え、交配もする。
◆ジンジソウ(ユキノシタ科)5枚の花弁のうち、上の3枚が短いため漢字の「人」に見えることから名付けられた。
(1)◆ヤマトリカブト(キンポウゲ科)青紫色の花はひときわ目を引く。舞楽の楽人がかぶる鳥兜に花が似ているから名付けられた。毒草だけにすごさも感じられる。
(1)◆アキチョウジ(シソ科)細い茎にぶら下がって、はかなげに咲く筒状の花は「チョウジ」に似て秋に咲くことから名付けられた。
◆リンドウ(リンドウ科)熊の胆よりもさらに苦いので竜肝(リンドウ)と名付けられた。紀元前1世紀、イリュリア王ジェンテウスは、ペストに苦しむ人々のため、山に入り、神の祈りの矢を放った。その矢がリンドウの根にささり、薬用にしたという伝説がある。
◆サラシナショウマ(キンポウゲ科)白い円柱状の花が林の中で目立つ。春の若菜をゆでて、さらして、食用にしたことが名の由来
◆ミズヒキソウ(タデ科)紅白の水引が名の由来。上から見ると赤く、下から見ると白◆ノコンギク(キク科)野の咲く紺色の菊の意味、野菊の総称。ノコンギクを改良したのがコンギク
◆ミセバヤ(ベンケイソウ科)可憐で美しい花を「だれにみせようか」が名の由来。別名タマノオ(玉の緒)、男女を結ぶひもの意もあり、万葉集や百人一首に登場する。
花
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