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蚕が糸になるまで
養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

伊那谷が育むちいさないきもの

蚕が糸になるまで<br>養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

 かつて伊那谷は、養蚕が盛んな地域として知られていた。しかし、現在上伊那の養蚕農家は11軒、伊那市内では2軒となった。
 農家にとって養蚕が貴重な収入源だった時代、家の中で蚕を飼い、家人と寝食を共にするような暮らしの中で、「お蚕様」と呼んで大切に育てていた。土壁、2階建ての養蚕農家独特の建築は、伊那谷のひとつの風物詩として、今では貴重な風景となっている。
 今回の朝の学舎は、伊那市西箕輪小学校3年生が、地元西箕輪地域で養蚕農家を営む唐澤芳蔵さん幸子さん夫妻を訪ね、蚕から繭、そして糸になるまでを体感した。

「蚕にさわったよ」

蚕が糸になるまで<br>養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

 西箕輪小学校3年生は、今年春から夏にかけて、理科の授業の中でやままゆ(天蚕)の飼育に挑戦した。蚕は、別名〈温度虫〉と呼ばれるほど、温度管理には細心の注意が必要とされている。この夏の猛暑の影響からか、3年生が飼育したやままゆは、多くが失敗に終わってしまったという。他にも、ヤゴなど、ちいさな生き物に大きな関心を寄せている児童たちは、自分たちの近くに養蚕農家があることを知り、訪れることになった。
 唐澤さんの蚕室を訪れたのは、9月12日。毎年、春、夏、秋の三回、蚕を飼育している唐澤さんにとって、この季節は秋蚕(しゅうこ)の飼育時期で、この日は8月30日の配蚕(=はいさん・2齢まで育った蚕が農家に配られる日)から2週間後にあたり、蚕は5齢、体長約7センチに成長していた。
 児童たちは、蚕をてのひらにのせたり、蚕が食べている桑の葉の匂いを嗅いだり、蚕が桑の葉を食む「サリサリ…」という小さな音に耳を澄ませ、「はじめは少し気持ち悪いと思ったけど、触ってみるとかわいい」と蚕を囲んでいた。
 それから一週間後。蚕たちは繭になる時期を迎え、児童たちは再び唐澤さんの蚕室を訪れた。蚕が一匹ずつ入っているのは、『蚕巣』(こす)と呼ばれるもの。ここでゆっくりと糸を吐き始め、2、3日かけて繭になっていく。中には、糸を吐きはじめたばかりで、薄い繭の中で糸を吐いている蚕の姿を見ることができるものもあり、児童たちは唐澤さん夫妻の説明を聞きながら、蚕たちの懸命な姿から目を離せない様子だった。
 そして、それからさらに数日後、児童たちは飯島町にある勝山織物絹織製作研究所を訪れ、繭から糸を取りだし、布として織られる場面も見学した。
この研究所では、自分たちで蚕を飼い、その繭から糸を取りだし、その生糸から織物製品を製作している。この日までに、蚕から繭になるまでを観察してきた児童たちは、ちいさな真っ白な繭から糸が取り出される瞬間に出会い、一個の繭から千メートルもの糸が取れることに驚きながら、その糸の輝きに歓声をあげていた。

蚕が糸になるまで<br>養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

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蚕が糸になるまで<br>養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

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蚕が繭になるまで

蚕が糸になるまで<br>養蚕農家唐澤芳蔵さん・幸子さん 伊那市西箕輪小学校3年生

 唐澤さんの秋蚕(しゅうこ)が配蚕されたのは、8月30日。蚕は、卵からかえって繭を作るまでに、1齢から5齢と呼ばれる成長過程があり、その間に4回の「眠」(みん)と呼ばれる休みと、4回の脱皮をする。そして、通常、約25日間で繭になり、出荷となる。
 かつて伊那谷には、小さな集落単位に稚蚕(ちさん)飼育所があり、養蚕農家はそこから、2齢まで育った蚕を手に入れて飼育していた。しかし、現在長野県内にある稚蚕飼育所はほんのわずかとなり、伊那谷には一ヶ所も残っていない。そこで、唐澤さんは、JA上伊那を通じて蚕を手に入れている。
 唐澤さんのもとに届いた2齢の蚕は、体長1センチにも満たない小さなもの。ほんのわずかな温度変化の影響を受け、細菌にも弱いため、何度も消毒を重ねて飼育していく。この頃は、桑の葉の先の柔らかい部分だけを摘んで与え、蚕の成長とともに少しずつ桑の与え方も変わってくる。一日に数回、蚕の食欲に合わせて新鮮な桑を与えるため、毎朝畑から桑を摘み、時には早朝、時には夜中にも桑を与えることがあるという。 
 最初は小さいために、蚕を飼う「蚕座」(さんざ)は4枚。順調に成長して、蚕座はやがて28枚にも増えていく。蚕の成長とともに蚕座も重くなり、唐澤さん夫妻にとっては重労働が続くことになる。そして、最後の脱皮が終わり、5齢となると、蚕座からおろされ、蚕は放し飼いにされる。 それから数日後、蚕は繭になる準備を始め、「蚕巣」の中で一匹ずつ糸を吐き始める。
 唐澤さんは、現在、岡谷市にある製糸会社に繭として出荷。唐澤さんのように、機械化をせず、蚕と会話するようにていねいに飼育している養蚕農家は数少ないため、その質の高さから、注目されているという。
 「蚕だって生き物だから、しゃべってやれば伝わる。きっとわかっていると思うよ。犬だって猫だって同じ。そうやって会話しながら育ててるんだよ。そうすると、かわいくてたまらないね」(唐澤さん)

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