【盆栽愛好クラブ「一鉢会」会長 飯田光晴さん】
駒ケ根市北割一区
自宅の庭には200鉢以上の盆栽が所狭しと並ぶ。「盆栽にはね、一つとして同じものがないんだ。みんな生きているんだから、手間をかければかけただけ応えてくれる。大きいものも小さいものも、みんな同じようにかわいいね」
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盆栽を始めたのは20歳の時だった。
「近くに植物を研究している大学の先生が住んでいてね。小さな錦松を何本か分けてもらった。錦松は皮がはぜて幹が太く見えるが芯は細い。育てるのが難しいんだ。鉢に植えて一生懸命に世話をした。長く持たないといわれているが、今でも何とか元気に生きているよ」
数鉢から始めた盆栽だったが、松、葉もの、花もの、実もの竏窒ニそれぞれの味わいに魅せられ、いつしか思わぬほどに数が増えた。
長いこと自己流で楽しんでいたが、50歳になったころ、先輩に誘われて一鉢会に入会した。
「自分にはまだそこまでの力はないと思ったが、入ってみてやっぱりよかった。展示会があると張り合いが出るしね。何とか上手にやろうという気になるから」
失敗も多かった。暑い時期に泊まりで出掛けた時、息子に水やりを頼んだが、暑い盛りの日中、ホースの中にたまった水が熱くなっていることを知らずに水をやったのだ。
「煮え湯をかけるようなもの。帰って来たら木に元気がなくなっていて心配したなあ」
肥料をやりすぎ、弱らせて枯らしてしまったこともあった。
「だけど苦労して育てた盆栽を展示会に出して、見た人に『これはいい』と言ってもらえた時はうれしいねえ。サツキの花がうまく咲いてくれたり、紅葉の時期に葉ものがきれいに色づいてくれると、やっていてよかったなあ、と心から思えるよ」
「何年やっても一番難しい」というのが枝の形を整える針金掛け。木に負担がかかり過ぎないように慎重にやらなければならない。
「枝をどんなふうにしようと考えていれば、それこそ時間のたつのも忘れてしまう。大変なんだが、その時が一番楽しい時間なのかもしれないな」
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8年前から会長を務める。建具店の仕事の合間をみては日々、手入れに余念がない。
「盆栽をやっていなかったらただ仕事をして寝るだけで、毎日何をしていいのか分からずにボーっと過ごしていたと思う。今は仕事もおろそかにできないが、いずれ仕事をやめたら後は盆栽に集中できる。それが今から楽しみだ」
(白鳥文男)