つくしんぼ保育園園長
伊那市御園
宮田克思さん(41)
保育園としての始まりは、まだ上伊那に保育園が不足していた40年ほど前までさかのぼる。仕事を持ちつつも未満児を抱えて困っていた父母らが、アパートの一室を借りて始めたのが始まりだった。園舎ができたその後も、当時の公立保育園では対応していなかった朝7時から夜7時まで保育を行ったり、手厚い未満児保育に取り組むなど、働く保護者のよりどころとなってきた。
「今は雇用状況が安定しなかったり不規則な勤務体制の中でやってるご家族も多い。だからこそ、お父さん、お母さんと同じ目線に立ちながら“子どものために”ってことをどこまで一緒に考えていけるかが大切だと思う。地道なコミュニケーションを積み重ねながら、さまざまな家庭を支えられる保育園でありたいと考えています」と語る。
◇ ◇
つくしんぼ保育園に出合ったのは17年前。当時はまだ、男性保育士は珍しく、保育士としても3、4年の駆け出しだったが、「これからは男性も保育士になる時代がくると思う。まだ無認可の保育園だけど、やってみないか」と保護者の一人がそう声をかけてくれた。これから認可を受けようという動きの中で、若い力が必要とされていることを感じ、同園の保育士となることを決意。その4年後、高齢だった前園長の後を継いで弱冠28歳で園長に就任した。
「園長になってからは、切実な思いで『ここしかないんだ』と、集まってくる方々がこんなにもいるんだと改めて実感しました」と振り返る。
しかし、保育士の経験も浅い中、無認可保育園の運営を任された戸惑いは大きかった。
無認可保育園の場合、補助金の額も少なく、支給も安定していない。厳しい運営をやりくりしながら、認可保育園となるべく、県や市、保護者や市民などに向けてさまざまな資料や文書を作成。これまでの園の実績を伝えつつ、認可を必要としていることを多くの人に知ってもらうために奔走した。
「長年の先輩たちが作ってきてくれたものをこれからの時代を作っていく私たちが崩してはならないと思った。避けて通れない苦しみもありましたが、自分にとっては良い経験になりました」
認可園となって今年で10年目を迎えた。当時のさまざまな経験を経て、多方面から保育について考えられるようになった。
◇ ◇
認可園になってからも常に厳しい状況はあっが、その一方で保護者の面々が温かく支えてくれた。
この時期に行うシクラメン販売もその一つ。十分でない園の運営費を賄うため、保護者が中心となってシクラメンを販売する。それこそ、仕事を持つ保護者が多く、負担も大きいはずだが、もう30年近く続いている。
「保育園の内情を保護者の方々も共有しているし、『自分たちの保育園』という思いも、伝統として引き継いでくれているのかもしれません。『細かいことはよく分からないけど、みんなで支えてやるから頑張れ』って言ってくれた人たちのおかげで、未熟な部分があってもやってくることができたのだと思います」と語る。
◇ ◇
いまだにコミュニケーションの難しさなどは日々実感しているが、地道な積み重ねの中で信頼関係を築いきたいと考えている。
「子どもの日々の様子など、伝えたい思いはたくさんあるんです。それは地道に伝えていきたいと思います。“この保育園らしさ”を日々大切している中で、子どものちょっとした変化を感じてもらい『つくしんぼ保育園で良かった』と思ってもらいえるようになりたいです」
◇ ◇
今年のシクラメン販売は10、11日に伊那市のニシザワショッパーズ双葉店前で行う。価格は1鉢1300円。時間は午前10時縲恁゚後3時。
問い合わせはつくしんぼ保育園(TEL78・4157)へ。