【古典文学研究者 畔上利春さん】
駒ケ根市赤穂北割一区
駒ケ根市の赤穂公民館で古典に親しむ講座の講師を長く務めている。月に1回の講座を担当して今年で8年目。『平家物語』を4年、『万葉集』を3年にわたってそれぞれ講義し、今年度は信濃の古典をテーマに選んでいる。穏やかで飾らない人柄が反映された雰囲気の講座は「窮屈な感じがしなくて気楽に楽しめる」「すんなり頭に入ってくるから疲れない」「古典が身近に感じられる」と聴講者に好評。何年も続けて受講する人も多い。
「古典というと、どうしてもとっつきにくい印象がありますからね。あまり難しく考え過ぎてしまうとせっかくの素晴らしい作品がつまらないものになってしまう。だからとにかく、講座生の皆さんにとって分かりやすく、楽しめるような講義を心掛けています。自分も皆さんと一緒に楽しませてもらっているようなものですよ」。
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飯山市生まれ。教員として県内の小中学校に勤務し、赤穂東小学校の教頭を最後に60歳で退職した。中学では国語を教えていたが、古典への思い入れは特になかったという。古典文学に目覚めたのは意外に遅く、40歳ごろのこと。
「万葉集の中の名歌『信濃道は今の墾道刈株に足踏ましむな沓はけ我が背』(信濃道は新しく切り開いた道です。切り株でけがをしないようにくつをはきなさい、あなた)に出合ってね、とても強くひかれた。妻が夫を思ういじらしい気持ちがよく出ている歌ですね。千数百年も昔の人の歌なのに、その思いは今と同じで変わらない。それを考えると心の奥に迫ってくるものがありました」
それからは本や資料を集めて読んだり、研究者に話を聞いたり、機会あるごとに教育会の書籍に寄稿するなど、万葉集の魅力のとりこになった。お気に入りの歌を懐中時計の裏ぶたに彫りつけたほどだ。
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退職後は妻と2人で万葉集の歌ゆかりの地を訪ねて歩く旅を楽しみにしている。
「ただ好きで長くやっているだけで、研究者なんて大それたもんじゃない。でも、やはり日本人は日本の伝統をしっかりと学ぶべきだと思います。昔に比べてせわしない世の中になりましたが、日本の伝統文化である言葉をもっと大事にしていきたいものですね」
(白鳥文男)