【竹細工職 大嶋浩さん】
駒ケ根市小町屋
破竹(ハチク)や真竹(マダケ)を性質に応じて使い分け、かご、びく、ざる、み、くま手などを製作して全国各地のクラフト展などに出展しているほか、地元の商店などに卸している。
「昔は農作業の道具として庶民の生活に密着していたものだが、今は時代が変わってあまり使われなくなってしまった。だがクラフト展では、特に都会の若い人には受けているよ。例えばランプシェードなんかのインテリアに使うといい雰囲気が出るそうだ。あまり見かけなくなったからかえって新鮮に映るのかもしれないね」
◇ ◇
腕の良い竹細工師だった父の仕事ぶりを間近で見て育った。だが跡を継ごうという気もなかったし、父もそうしろとは言わなかった。旧国鉄に勤務し、車掌などを務めたが民営化を機に退職し、40歳代で好きな電気の技術を生かそうと駒ケ根ハムセンターを開店。電気部品や工場の治具などを製造、販売していたが、店番の合間の余暇でできることは何かないか竏窒ニ考えて思い浮かんだのが、子どものころに見ていた竹細工だ。
「実際のところ、たまに手伝いをしたぐらいで本格的に手ほどきを受けたことはなかったから、本当に作れるものかどうか自分でも半信半疑だった。竹を編むことよりもまず材料を切ることの方が難しいんだが、父のなたを使って、手つきを思い出しながら試してみたら案外あっさりとうまくいった。何だかほっとしたし、うれしかったよ」
竹の基本的な編み方は5、6種類ほどだが、一から作品を作るのは初めてでもあり、その後の製作はなかなか思うように進まなかった。
「だけど父の作った製品がけっこう残っていたからね。ばらしてみて『ああ、ここはこんなふうに編んであるのか』と調べたりしながら試行錯誤でいろいろとやってみたんだ」
慣れるに従い、生来の器用さも手伝って親譲りの職人芸に徐々に磨きがかかってきた。
材料の竹も所有者の竹藪に行って自分で切ってくる。切り出しの時期はいつでもいいというわけではなく、秋か冬でなければならないという。
「水を上げている時期に切った竹は虫がつきやすく、製品にしてもすぐ駄目になってしまう。だから秋に1年分の竹をまとめて切ってくるんだ。切るのも力がいるからけっこう大変なんだよ」
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「竹には現代のプラスチック製品なんかと違って何ともいえない自然のぬくもりがある。やっぱりそれが一番の魅力だね。でも竹製品でさえあればそれでいいってものじゃない。使い捨てにされるような、きゃしゃですぐ壊れるような物は作りたくないよ。インテリアに使われるんだとしても、本来の用途である実用に耐えられるだけのしっかりした物を作りたい」
(白鳥文男)