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伊那有機栽培研究会会長
伊那市東春近下殿島
鳥原 實(まこと)さん(76)

伊那有機栽培研究会会長<br>伊那市東春近下殿島<br>鳥原 實(まこと)さん(76)

 おれはこれ以外、ほかのことができるわけではないし、値段(米価)が下がったからといっておいそれとやめられない。メンバーで集まった時も、「こういう時だからこそ正念場だ」ってよく話しているんだよ竏秩B
 減農薬、無化学肥料栽培に取り組み始めたのは10年ほど前。年々米価が下落していく中、「売れる米作り」の必要性を強く感じていた時だった。しかし、おいしい米でなければ売れるはずもない。一念発起し、なるべく除草剤を使用しない、有機肥料を用いた栽培方法を模索し始めた。
 まずは6ヘクタールのうち、30アールからのスタート。
 有機肥料の研究、販売に取り組む業者に指導を仰ぎながら、土壌分析をした結果、それまで使用していた化学肥料や除草剤などの影響で、土壌は強い酸性を示した。そのため、1年目は土壌改良に重点を置いた。アルカリ性の石灰を入れ、苦土肥料も用いた。また、肥料もカキの殻や大豆かす、魚かす、米ぬかなどの有機物を原料としたものに変えた。
 最初の1年はあまり変化が無かったが、2年、3年と年を重ねるごと、土壌は変化。それとともに米の甘味や粘り、歯ごたえも格段に良くなっていくことを実感した。
 「食味を上げるのが一番難しいが、指導を仰いだり、自分なりに研究したりする中で、(水分やたんぱく質、アミロースなどの数値から食味を計る)食味計でも、80以上が出るようになった。こういう数値が出ると嬉しい」と笑顔を見せる。
 その後、ほかのほ場でも減農薬、無化学肥料栽培を拡大。同じ思いで有機栽培を研究してきた仲間と伊那有機栽培研究会を立ち上げ、同様の方法で米作りに取り組んできた。
 「作ることも大切だが、これからの百姓は売ることも考えなければならない。しかし、売ることは作ることより難しい。だから研究会では、どこに売るべきか、どうやって売るべきかなども話し合う。仲間がいることは力強い」と語る。
 ◇ ◇

伊那有機栽培研究会会長<br>伊那市東春近下殿島<br>鳥原 實(まこと)さん(76)

そんな中、04年11月、こだわりを持って生産、製造された農産物や農産加工品を県が認定する「原産地呼称管理制度」の品目に、“米”が加わり、会としても出品することになった。
 認定米になるには、農薬使用の制限、化学肥料の制限など、厳格な審査基準と、官能審査をクリアしなければならない。
 第1回官能審査の結果、認定米となったのは、たった9品。伊那有機栽培研究会の米は、その一つとして、認定米に認められた。
 「自分たちのやり方が認められたことが嬉しかった」と当時を振り返る。
 また、今年11月には3年ぶりに仲間の一人が伊那有機栽培研究会として出品したコシヒカリ「上納米」が認定米となり、仲間で喜び合った。
 ◇ ◇
 これまでは関東、関西方面への出荷が中心だが「地域の人たちにも自分たちの作る米の味を知ってもらいたい」という思いも強く、現在は地元へ販売する方法を模索している。
 「今後は除草剤の利用を最少限度に抑え、安全、安心かつ、おいしい米を作りたい。最終目標はまったく除草剤を使わない、完全無農薬、無化学栽培なんだけどね。今よりももっとおいしい米を作って、業者にも『おれはこの値段じゃなければ売らないよ』って言えるくらいになりたいね」

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