直播で雑草稲「赤米」の発生が増加
水田に直接もみをまく「直播(じかまき)栽培」は、労力軽減、低コスト化を目的として、県内各地で栽培規模を増やしている。中でも上伊那は、直播作付け面積が最も多く、本年度は239ヘクタール。県全体(440ヘクタール)の半分以上を占めている。そんな中、数年前から直播ほ場で雑草稲の「赤米(トウコン)」が発生するようになり、問題となっている。収穫した米に赤米が混入し、等級落ち、検査不合格となるケースもあり、現在県や関係機関が連携しながら研究、対策方法を模索しているが、赤米の発生したほ場では、当初目的としてきた低コスト化、労力軽減が相殺される現状にある。
「赤米」は、昔は全国的に栽培されていた品種。赤米に詳しい大場茂明さん(71)=中川村=によると「収量が少なく、品質が悪いなどの理由から、明治時代、大々的に栽培転換された。昭和40年代以降、田植え機による移殖栽培が普及したが、移殖栽培では普通の稲の生命力の方が強かったため、発生が抑制され、あまり問題とならなかった」。
長野県は農業者の高齢化、米価の下落などを受け、1990年ころから各地で直播の導入に着手。それと同時に、赤米の発生が徐々に顕著化してきた。
赤米は脱粒性のため、成熟すると自然に種子が水田に落下し、直播栽培の水田で同時発生するため、除草剤による防除が困難で、大場さんは「決定的な解決策がないのが現状」と話す。
現在は直接手で赤米を除去したり、出芽した赤米を耕起や代かきで埋没させる方法などで対応する研究を進めているが、あまりに発生が多い場合には一度移殖栽培に切り替え、発生を抑制することも必要となる。
上伊那での今年の収穫分は、上伊那農業協同組合(JA上伊那)が保有する玄米の色彩選別機で赤米を取り除くなどして対応。また、上伊那農業改良普及センターは、具体的な対策や赤米の発生しやすい場所などを示した「防除対策マニュアル」を作成中で、コンバインなどに付いた赤米の種子がほかのほ場に広がらないよう、農家らに促すようにしたいとしている。