伊那学コモンズ講座 第4回
飯島町営農センター、環境保全型有機農法の2事例を発表
上伊那農業改良普及センターなど県の出先機関が合同で開く伊那学コモンズ講座の第4回が6日、県伊那合同庁舎であった。飯島町産業振興課長齋藤久夫さんの「飯島町の1000ヘクタール自然共生農場づくり」と、伊那市美篶の水稲農家小川文昭さんの有機農法に関する「ひと・むし・たんぼ」の2つの事例発表があり、約50人が熱心に耳を傾けた。
齋藤さんは、04年12月に政府発表の米政策改革大綱に盛られた「認定農業者制度」や「集落型経営体」の規定が、「農業と農村のあり方に大きな影響を与える」と強調。飯島町の営農センターの仕組と、独特な環境配慮型農業のプラン概要を説明した。
「頭脳集団」としての営農センターが作付け計画等を作成し、「実働集団」としての地区営農組合がそれを実施するという形で、町独自の環境基準を設けて、多様な食物を栽培すると同時に、グリーンツーリズムや農業関係ビジネス学校なども開催するという独特のプランに、参加者の関心も高かった。
小川さんは、有機農法による水稲栽培を17年間続ける中で、田んぼの生き物を観察・保全する活動を進めてきたことを紹介。知り合いの農家の後継ぎが自殺したことことに触れながら、「農家が農業を続けて行くことに魅力を感じられなくなっているのは何故か」と問題を提起。
「農家の経営は大切だが、お金になる作物をたくさん作ることに没頭するあまり、農業は米や野菜だけでなく、田んぼや畑に住む生物を育て、それを見つけたり観察したりする喜びを発進する力を失った。それが現在の最大の農業問題ではないか」と訴えた。
伊那学コモンズ講座は、県や地方自治体の職員が自ら働く伊那谷の歴史や魅力を知り、行政サービスに活かすことを目指して始められた。峯村きぬ子農業改良普及センター所長は「講演の2事例は、上伊那が全国に発進で切る優れたもの。当初は当センター主催の『環の農業者セミナー』で事例発表をお願いしたが、門戸を広げようと思い、伊那学コモンズ講座として行った」と話した。
なお、講師の一人、小川文昭さんが所属する「ひと・むし・たんぼの会」の会は、毎週木曜日、本紙6-7面にリレーエッセーを寄せている。