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興亜エレクトロニクスが中学校で・スものづくり授業・ス

自社開発の抵抗器を教材に

興亜エレクトロニクスが中学校で・スものづくり授業・ス

 下伊那郡阿南町の中学校で、地元に本社のある興亜エレクトロニクスの社員が同社製造の抵抗器を教材に使い・スものづくり・スの楽しさを生徒らに教えている。

興亜エレクトロニクスが中学校で・スものづくり授業・ス

 ・ス理科離れ・ス・ス技術離れ・スが進む中学生らに「地域の企業の役目として、ものづくりの面白さを伝えたい」と考えた同社が、町や学校に要請して実現した理科の特別授業で、阿南町立第一中学校の2年生33人が対象。2月中旬から3月中旬まで連続10回、同社の社員数人が毎回授業に参加し、生徒に抵抗回路の組み立て方などをアドバイスしている。
 教材は、同社が国内で初めて開発した、発色塗料を塗った固定抵抗器。抵抗器が徐々に熱を帯びることで発色塗料の色が黄、緑、青と段階的に変化していく様子を、目で確認できる。シート状温度計などに使われているこの新商品を教材に選んだ理由を、同社は「遊び心があって、生徒も興味を抱くと考えた」と説明する。
 基板への抵抗器の配置(デザイン)は生徒に任せ、自由な発想を尊重。生徒らは文字や星の図柄などを独自に組み立て、発色の様子を楽しんでいる。
 連続授業を中心的に指導してきた同社支援センター技術グループの鈴木靖浩さんは「自分で組み立てた回路が動いた時の感動はいつまでも忘れないと思う」として、技術離れへの歯止め効果に期待。さらに「電気にかかわる企業の就職先としてわが社を記憶しておいてもらえれば」と願う。
 同社、学校、町の三者はいずれも、この・スものづくり授業・スをなんらかの形で継続したい竏窒ニいう考えで一致している。理科離れの防止、雇用対策として産学官が取り組む新たな試みのモデルケースとして注目される。

興亜エレクトロニクスが中学校で・スものづくり授業・ス

 興亜エレクトロニクスの提案を受けた町産業推進センターの職員と鈴木さんが阿南第一中学校を訪れたのは昨年の12月。同校の理科の教科担任・鈴木崇晃教諭に「発色塗料を塗った抵抗器を開発したが、教材として利用できないか」と相談した。
 鈴木教諭は常々、子どもにとって「理科」が「好きだけど日常生活に役立たない教科」になっている現状を憂え、「生活の中に生きる理科を実感させたい」と考えてきた。そのため、一昨年、昨年と「ものづくり」を授業の中に位置付けて研究を進めてきた。同教諭は、町と興亜エレクトロニクスの要請を快く受諾。2年生の単元「電流のはたらき」の発展単元として・スものづくりの授業・スを仕組み、正規の単元ですでに学んだことをそこで試し、応用してみることにした。
 一方、町内の企業や町などでつくる「阿南町工業振興協議会」(小池宣貴会長)も積極的に動き、企画を盛り上げた。生徒の人数分用意したキットの費用は興亜エレクトロニクスと町が負担した。一人1キットの提供は、グループ学習と異なり、各自作りたいものを自由に作ることを可能にした。
 授業は初回に電流、電圧、回路について学習。発色抵抗器で作る装置の図柄(イメージ)を考えた。2回目には設計図を作成。3回目以降、抵抗器が並列つなぎになるよう回路を考えながら基板に組み込み、はんだ付けした。配線を間違えるとショートして発色はしない。
 鈴木教諭は「電流から熱や光などが取り出せること、電力の違いによって発生する熱や光の量に違いがあることなどに気づいたはず。あの小さな抵抗器によって身の回りの電化製品が制御されていること、そして、その大切な抵抗を同じ町内にある興亜エレクトロニクスで製造していることを学ぶことで、地域の産業にも目を向けてほしい」と期待する。
【阿南第一中学校・古田數馬校長(談)】
 日常の体験の中でものをつくることが昔より少なくなっていることは確か。そんな中で興亜エレクトロニクスさんから声を掛けていただいた。鈴木先生はものづくりを自分の研究テーマにしている。子どもたちも興味をもっている。興亜さんの支援と理科の教員の熱意で、地域の企業とタイアップした効果的な学習ができた。子どもたちが主体的に学ぶ姿勢を大切にし、子どもの意欲を引き出したい。社会科で地元の温泉施設をテーマに学習したことがある。厳しい経営現状を知り、もっと良くなるのでは、と自分たちなりに考えた。地域の内情は、踏み込まなくては分からない。地域教材を重視して学習に取り入れたい。理科ではそれがものづくりになっている。

興亜エレクトロニクスが中学校で・スものづくり授業・ス

 ものづくりの面白さを生徒らに伝えることにこだわる同社は、企業として当然、雇用問題に絡んだ人材育成を視野に入れている。
 長野県の最南端に位置する阿南町の人口は5683人(3月1日現在)、世帯数は2194戸(同)。小学校が4校、中学校が2校あるが、児童・生徒数は年々著しく減少し、06年は児童数310人、生徒数は151人と、1975(昭和50)年(649人、349人)の半分以下にまで落ち込んでしまった。
 Iターン、Jターンなどがあまり期待できない状況で、このまま地元の若者が減少し続けると、雇用への不安が拡大することは間違いない。町外からの雇用などに依存する一方で、若者の定着対策が待たれる。関係者らは「いったん都会に出た若者も戻ってきてくれるように、小中学生のころから、地元にこういう企業があって、こんなことをしているんだ、ということを知らせることは重要」との共通認識をもつ。
 阿南町の法人企業は6社。すべて製造業で、従業員数はいずれも50人以上。
 町産業振興センターでは「企業訪問して話を聞いてみると、各社雇用面に不安を抱えていると感じた。今回の興亜エレクトロニクスの試みが、長い目でみた雇用確保につながれば嬉しい。授業が町内の他の企業に拡大していく可能性もある」と期待する。
 同センターと阿南町工業振興協議会は来年度、阿南第二中学校でのものづくり授業のほか、町内4小学校児童の地元企業見学を計画する。

【生徒らの声】
◇金田侑也君(一番早く装置完成)
 プラス、マイナスを間違えなく配線するところが難しかった。選択で技術を学んでいるのではんだ付けの経験はある。野球部でピッチャーをしているので「P」の文字に抵抗器を配列した。
◇佐々木滉君
 抵抗器を「一正」の文字に配置した。特に理由はない。はんだ付けは一気に出来た。興亜エレクトロニクスという会社があることは知っていたが、どんなことをしているか、よくわからなかった。
◇冨井克晃君
 お父さんが興亜エレクトロニクス新野工場に勤務している。抵抗器は見たことあるが、発色するのは初めて見た。自分たちで開発して作り上げていく仕事をしているお父さんを尊敬する。ものづくりは好き。装置のデザインは「スリーダイヤ」。
【興亜エレクトロニクス・仲藤恭久社長(談)】
 KOA創業者の向山一人が農工一体で地域ごとに企業を起こしたが、世代交代や環境変化が進む中で、改めて興亜エレクトロニクスの地域での役割を考えた。理工系を含め、知識が優先してものづくりの喜び、感動が少なくなっている若者に、創業時代から製造を続けている抵抗器を通じてインパクトを与えたい。われわれの若いころは、ラジオやブザーをみな作った。周波数を調整して音が出た時の喜びを覚えている。今回の授業がきっかけになって地元企業を振り返ってもらい、雇用が増えていけば。今回だけで終わらせず、受け入れてくれれば継続したい。
【興亜エレクトロニクス(株)】
1969年、興亜電工の関連会社として設立。本社は下伊那郡阿南町西条。固定抵抗器を製造する。資本金4億円。社員300人。

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