輝く!経営者~新たな挑戦~ 菓匠Shimizu 清水紀光社長
菓匠Shimizu
◆本社/伊那市
◆資本金/1千万円
◆従業員/30人
◆TEL/0265・72・2915
◆FAX/0265・76・8622
「上伊那・輝く!経営者キャンペーン」で紹介したのは、04年7月。当時、山寺区に店舗を構えていたが、ちゅう房が手狭になり、05年秋、上牧区へ移転新築した。07年の創業60周年を機に、社名を「菓匠しみず」から、新店舗のイメージに合わせて「菓匠Shimizu」に変更。
商品に込めた思いを直接、お客さまに伝えたいと委託販売はせず、一店集中主義で商売を続けている。
こころが潤う空間
店舗は、長男・慎一さんが修業した南仏のプロバンス地方の民家をイメージ。庭にハーブや樹木などを植え、店舗を囲む。中庭から客を招き入れ、売り場から菓子作りの様子や作り手の表情が見えるように配した。
店内のショーケースには、和・洋菓子合わせて1日150種類が並ぶ。ショーケースをのぞきながら、売れた菓子を数個ずつ作る。「効率は悪いが、手間を惜しんではいけない」と量だけを追究せず、質を大事にする。
丸いデコレーションケーキは1日30縲・0個の注文が入る。そのうち3分の1は、キャラクターや子どもの顔写真などをケーキの表面に描く特別注文。ほとんどが誕生日用。すべて引き受け、子どもたちを喜ばせている。
当初、店内の一角で喫茶コーナーを設けようと考えていたが、忙しくて手が回らず、喫茶スペースは1年間、空いたまま。そのスペースを生かすため、パンを焼くかまを入れ、焼きたてのクロワッサンの販売を始めた。「評判は上々」。
将来的に、菓子作り教室を開く計画。菓子の作り方だけでなく、菓子へのこだわり、おいしさの秘密を知ってもらいたいという思いがあるからだ。そして「我々も努力していかなければならない」と心する。
安心・安全 確かめた素材
全国各地で、食品の偽装問題が相次いだ。
菓子作りで使うイチゴ、リンゴ、洋ナシ、ブドウ、ラズベリーなどの素材は「地産地消」。「旬のものを味わい、本当のおいしさを感じてほしい」と手に入る時期にしか作らない。
イチゴ一つとっても、契約農家から完熟して収穫したものが届く。長距離を運ばれてきたものとは違い、傷物はなく、一つの無駄も出ない。材料となる卵や仕入先にも赴き、ニワトリの飼育方法、栽培方法など安心・安全を自分の目で確かめている。
◇ ◇
季節に味わう桜もちや草もち、かしわもちなど和菓子は、地域の文化と密接にかかわるところがある。
子どものころに経験がなかったら、大人になっても知らないまま。写真付きで行事を紹介し、和菓子と結びつけたコーナーを設けて食文化を伝え、残したいと考えている。
感謝する心
「感謝する心を持ちましょう」。創業60周年を機に、社是を決めた。「すべての人に対して感謝する。感謝する心がなければ、素直にも、謙虚にもなれない」。商売の原点であり、従業員が1、2人だったときから言い続けている。
毎朝、「元気のある本気の朝礼」がある。夢や数年後の自分はどうしているかなどその日のテーマを決め、全員が発言する。「口に出して言うことは大切なことで、始めてから職場に活気が出て、コミュニケーションも取れるようになった」という。
また、東京や名古屋などへ出向き、異業種の経営者の話に耳を傾け、さまざまなことを吸収したり、菓子作りの職人が集まる「菓志楽(かしら)塾」で研さんを積んでいる。
「菓子は人を幸せにする魔力を持っている。菓子だけでなく、夢や感動を共有することを大切にしていきたい」。最高の品を作り、最高の接客をするため、菓子職人が心を一つにする。
もっちり感の新商品
通年商品として売り出している、和のスイーツ。ガナッシュをもちで包み、ココア、抹茶、きな粉、ごまをそれぞれまぶした「餅(もち)しょこら」(6個入り700円)、キャラメル味、抹茶味の生クリームと北海道産のあんこをもちで包んだ「生クリーム大福」(1個160円)。いずれも地元産の米の粉を使っている。