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2411/(日)

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【障害者在宅就労支援NPO副理事長 双山浩司さん】

駒ケ根市経塚

【障害者在宅就労支援NPO副理事長 双山浩司さん】

 「これは下半身が駄目かもしれない」
 10年前の暑い夏の日、屋根ふきの作業中に足場を踏み外し、約3メートルの高さから落下して腰を強打した直後、激痛の中で直感した。
 「落ちたのは初めてではなかったが、あの時は体が全然動かなかった。脚をつねってみても感覚がなかったし、一瞬あきらめにも似た絶望感が頭をよぎった」
 不幸にも、その予感は現実のものとなる。担ぎ込まれた病院の医師の診断は「脊髄(せきずい)損傷。下半身完全まひで歩くことは二度とできない。ベッドから起き上がることも難しいかもしれない」というものだった。
 「何とかなるんじゃないか、という淡い期待もあったが、やっぱりそうか竏窒ニいう感じ。何だか人ごとのような気がした」
 激痛と精神的な苦しさとの戦いが始まった。その中で大きな支えになったのは家族の温かい励ましと協力だった。
 「実は診断は妻が聞いたんです。医師は、本人には言わない方がいいと言ったらしいが、妻は迷わずその足ですぐに教えに来てくれた。変に隠されるより、その方がよほどありがたかったですね」
 「子どもが保育園に入ったばかりでね。野の花を摘んできてくれたり『お父さん、頑張ってね』と書いた絵や折り紙を持ってきてくれたり竏秩Bこの子たちのためにも何とかしないといけないと思いました」
 隣りのベッドには頚椎(けいつい)損傷で手も動かない人がいて、死にたくても死ぬこともできないと言って泣いていた。
 「それに比べて自分は車いすで動くことができる。もともとケ・セラ・セラ(なるようになる)の性分。境遇に絶望することなく、現実を受け入れることができました」
 ◇ ◇
 激しい痛みと苦しいリハビリに耐え、1年半後に自宅に戻ってきた。しばらくたったころ、障害者対象のパソコン研究会のスタッフと知り合いになり、障害者がインターネットを通じて自宅でできる仕事を紹介する法人を一緒に立ち上げないかと誘われる。もともと障害者支援に関心があって活動していたこともあり、健常者とは違った立場から協力できるのではないかと考えて参画。苦労の末、翌年、健常者も含めた十数人でNPOの設立にこぎつけた。
 主な業務は障害者への仕事の紹介と支援企業との折衝、障害者のパソコン技能向上講習と個別指導のほか、指導者の養成などだ。
 「外に出ることが大変な障害者が自宅で働くことを手助けできるのは大きな喜びです。パソコンの操作ができればデータベース入力の仕事ができる。障害者といっても、それぞれの能力に応じた社会参加はできるんです。それが生きた証しにもなる。これからは企業が仕事をくれるのを待っているだけでなく、障害者でもこういう仕事ができるという提案型で事業を発展させていきたいですね」
 「あのけががなかったら、今どうして暮らしていたのだろう。でも、いまやっていることがほんの少しでも障害者の助けになっているとすれば、私のけがも無駄ではなかったと思えるんですよ」
 (白鳥文男)

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