中央アルプス農業実践塾の第1期生として農業を学ぶ
駒ケ根市下平
秋山香織さん(33)
小さい時は田んぼも畑もたくさんあって、おじいちゃん、おばあちゃんはいつもそこを耕していた。それがずっと頭の中にあったんだよね竏秩B
この春、東京都の職員を退職し、志を同じくする6人の研修生とともに駒ケ根市のNPO法人「中央アルプス農業実践塾」で農業の基本を学んでいる。
「昨日はサトイモの苗を植えて腰が痛くなりました。それでも外で汗をかくのは気持ちがいい。ここは景色もいいから、たまに景色を見て、おじいちゃん、おばあちゃんの姿を思い出しながら『こうだったかな』ってやっています」と笑顔を見せる。
これから12月までの間、さまざまな作物の作り方を現場で学びながら、農業の基礎を身に付け、最終的には自分で作物が作れるようになることを目指す。
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東京都八王子市上川町出身。実家は奥多摩の雄大な自然を望める町にあり、先祖代々が耕してきた農地もあった。自分自身は高校卒業後、東京都の職員に。都立高校の事務職員から始まり、最後は都庁の事務職員として約15年間を勤めた。傍(はた)から見ればうらやましがられる職場。しかし、自分にとっては毎日の通勤、人ごみの雑踏に疲れ果てていた。
「毎年2月に異動の希望をとるんです。でも、私は最後、どこも行きたくなくなっていました」と振り返る。
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自分はどうしたいのだろう竏秩Bそんなことを考えていた時、ふと頭に浮かんだのが、実家の農地のことだった。祖父母が昔耕していた畑や田んぼ。生まれ育ったここが大好きだった。しかし、後継ぎがいないという現実。
「ここもいつかなくなってしまうのだろうか」
そう考えると寂しさがこみ上げた。
「だったら、自分がここを耕したらどうだろう」
もちろん、それだけで食べていくのが難しいことは知っている。しかし、自分にとって心を安らげる場所は、都会の雑踏ではなく、田舎の自然だった。
その後、父母にその思いを打ち明けた。これまで農地を継いでほしいと言われたことはなかったが、父母もその気持ちを後押ししてくれた。
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しかし、自分には農業の基礎的な知識もない。そこで、農業研修に取り組む全国の農家が集まる「農業人フェア」へ足を運ぶ。
そこで、「中央アルプス農業実践塾」の代表を務める大沼昌弘さんと出会った。
「愛情をかけて育ててあげれば、野菜もそれに応えてくれるんだよ」。
大沼さんのそんな話に心を惹かた。そして実際に駒ケ根市を訪れる中で「ここで研修しよう」と決め、辞表も提出した。
「自分でも、辞めるなんて勇気がいると思っていたけど、案外すんなりと言えた。30代を過ぎて、肝が据わってきちゃったのかな」と笑う。
これから夏に向け、作業は本格化していく。
「『農業がすごい』ってことはこれまでも感じてきたけど、研修を通して実際の農業に携わり、身をもってそれを実感していきたい。将来的にはおじいちゃん、おばあちゃんが耕してきた実家の農地で農業をできれば」