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2511/(月)

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青年海外協力協会(JOCA)事務部駒ケ根事業課広報担当
駒ケ根市赤穂
北原照美さん(39)

青年海外協力協会(JOCA)事務部駒ケ根事業課広報担当<br>駒ケ根市赤穂<br>北原照美さん(39)

 自分は伝えたいものをたくさん抱えてモルディブから戻ってきた。それを駒ケ根の、特に子どもたちに伝えたいと思ってました竏秩B
 国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊としてモルディブでの任務を終えた後、協力隊員のOB、OGなどで組織する青年海外協力協会に就職。現在駒ケ根市にある青年海外協力隊訓練所に勤務し、協力隊事業の側面的支援をするとともに地元小学校などでの出前講座、施設見学の実施などを展開し、地域に根ざした国際交流活動を推進している。
 「モルディブに行く前は駒ケ根市内の幼稚園で6年間働いていました。その中で地元の人たちにすごくお世話になったので、やっぱり地元に還元したかった」と語る。

青年海外協力協会(JOCA)事務部駒ケ根事業課広報担当<br>駒ケ根市赤穂<br>北原照美さん(39)

 幼児教育の改善を目的としてモルディブを訪れたのは02年。約1200の島々から成るモルディブはリゾート地としてのイメージも強いが、それは外国の大手企業が進出している中央島の話。地方島はまったくの別世界で、サンゴでできた家が建ち並び、一つの家に家族20人が住むような伝統的な暮らしが営まれていた。幼児教育の現場ははだひたすら読み書きを教えるだけ。そんな中、発達段階に合った指導や情操教育を進めるため、保育士の指導に当たることになった。
 約半年は言葉の壁に苦労もしたが、何より、異文化の衝撃に感動することの方が多かった。やっとおしゃべりが楽しめるようになったのは1年後のこと。しかし、そのころから何を言われても腹が立つようになった。
 時間には必ず遅刻してくる、別のところで暮らす家族が遊びに来たといって平気で仕事を休む竏秩B
 日本の常識では考えられないことばかり。文化的な違いから、思うように事業が進まないことも多くなった。
 「当時は本当にイライラしていました。『普通時間は守るでしょ』『仕事とプライベートをごちゃまぜにしていいの?』って」と笑う。
 そんなある日、日本から自分の両親が来ることになった。するとモルディブの友人たちは、仕事も二の次で両親を出迎え、温かくもてなしてくれた。
 「だって、テルミの家族でしょ?」
 友人らが当たり前のように言ってくれたその言葉が何よりも嬉しく、ありがたかった。
 「その時に実感しました。『ああ、こういう風に家族を大切にする国だから、いろんなことに時間がかかるんだ』って。私がそれまで見てきたものは限られたもの、こういう生き方、こういう国もある。自分の考え方が、必ずしもそうとは限らないんだって」
 その後「普通は」という言葉を使わなくなった。プロジェクトも順調に進み、多忙な日々が続いたが、“テルミ・アンティ(先生)”と慕ってくれる子どもらとの生活は楽しく、活動の糧となった。
 ◇ ◇
 帰国して3年が経ったが、伝えたい思いは今も変わらない。
 「幼稚園の先生という仕事を通して『伝えることの大切さ』はつくづく感じてきました。だから、なるべく小さいうちにいろんな文化のことを伝えたかった。ここ(駒ケ根訓練所)には、帰国した隊員もたくさんいて、伝えたいことがたくさんある。地域連携の中で、もっとJICAを利用していただけるよう取り組んでいきたい」

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