風の谷絵本館の津金明さん
3000冊の絵本
飯島町の広域農道、与田切橋手前を東に下ると、白いとんがり屋根、風見鳥がちょっこんと乗ったメルヘンチックな建物が目を引く、風の谷絵本館である。
「絵本のすばらしさを子どもたちに知ってもらいたい。子どもがが絵本を読むきっかけになれば」と8年余りの歳月をかけて、リサイクル品を集め、ほぼ手作りで建設、00年秋開館。20年がかりで集めた3000冊の絵本を並べた。
「ほそぼそやっているうちに丸4年。親子連れを中心にいろいろの人が訪れ、絵本の世界を楽しみ、絵本を通して、人と人とのつながりが広がっている」と笑顔。
黒光りのする床は、旧飯島保育園舎の床のリサイクル「何千人もの子どもたちの思いが染み込んでいる」。民家の座卓、公民館の解体材や、旧役場の下駄箱、文書箱などをもらい受け、むくの木にこだわった癒しの空間は、だれでも優しく受け入れ、楽しい読書への入口になっている。
中川村生まれ、子どもの頃は天竜川や野山を駈け回って遊んだ。高校卒業後、上京し、結婚し子どもに恵まれたが「山に見える、自然環境豊かな場所で子育てをしたい」とUターン、25年前、飯島町山久に移り住んだ。
絵本との出会いは23年前、「伊南子どもの喜ぶ本の普及会」で絵本の読み聞かせを聞き「絵本の中にすごいものがある」と気付き「絵本は奥深く、じわと胸に染みる。かわいく、しっかり書けている」と感動。以来、絵本作家の講演会があると聞けば、長野でも松本にでも出掛け、好きな絵本を手当たり次第買い集めた。絵本がどんどん増え「絵本館を作りたいと妻に相談したところ、『つくればいいじゃん』の一言で心が決まった」
資金がなく、基礎工事から手作りで始めた。本業が住宅サッシの販売で、多少、建築方面に知識もあり、友人に協力してもらいながら、建設を進めた。途中、中だるみの時期もあったが、00年秋に、編集者で絵本作家の松井友さんの講演会を予定しており「最後は友だち5、6人がかけつけ、壁を塗ってくれて、オープンにこぎつけた。建物が完成したことで、達成感を味わった」と話す。
長男が8カ月の時から「お父さんの読み方は遅いから自分で読む」といいだすまで、毎晩読み聞かせをしたという経験から「お父さんやお母さんが自然の声で、毎晩、絵本の読み聞かせをしていると、子どもは本好きになる。字を習っているから、自分で読みなさいというのは禁物。読んでもらうと、心に深く入る」。
3千冊余の蔵書の中から好きな本、心の残る絵本を数冊挙げるのは難しいとしながら「『ちいさなおうち』は40年前に書かれたアメリカの本、時間の流れがゆっくりとまらず、しっかり書けている。『もこもこ』は擬音の面白さ。『おおはくちょうのそら』は家族愛を描いた秀作」。
また、絵本館では人と人とのつながりの中から絵本作家、編集者の講演、インド音楽など各種コンサートなどにも取り組む。維持費を捻出するために、軽食喫茶も営む。メニューは飲物と日替わりランチ。有機栽培の米、野菜、天然酵母のパンなど野菜中心に安全、安心にこだわった食事を提供する。
開館は午前11時-午後6時(夏は7時まで)。休館は水・木曜日。(大口国江)