伊那東小の野口輝雄教諭
カワニナの冬期屋外養殖に成功
伊那市立伊那東小学校理科専科の野口輝雄教諭(56)=伊那市西箕輪=が、ホタルの餌となるカワニナの冬期の屋外養殖に成功した。これまで、屋内の夏期と冬期、さらに屋外の夏期の養殖に成功しており、今回の成功により「養殖技術を確立した」とし、今後はホタル愛好家に役立つように、カワニナを養殖するボランティアを募りたい-としている。
辰野町の辰野西小学校に勤務した2004年から、カワニナの養殖研究を始めた。当時は養殖の技術論文もなく、全くの試行錯誤で、児童会のカワニナ委員会などと一緒に理科室で養殖し、3年間で約2万匹のカワニナの稚貝をホタルの名所、松尾峡に放流した。
“いつでも、どこでも、だれでも”をカワニナ養殖のキャッチフレーズに、室内に大きな水槽を置いての養殖は個人宅では難しさもあることから、07年6月から12月に屋外で研究し、150匹の親貝から約4千匹の稚貝の養殖に成功。引き続き12月から今年5月にかけ、自宅庭で冬期の養殖研究をしてきた。
カワニナが交尾をするためには水温を20度程度に保つ必要があり、水槽には保温のため野菜保存用の発泡スチロール容器を使用。金魚用などのろ過装置、エアーが出て水流ができる装置に加え、熱帯魚用の棒状ヒーターを使った。全てホームセンターで購入でき、費用は5、6千円と安く抑えた。
冬は外気温が氷点下10度ほどになるため、水温との温度差は30度もある環境だったが、3、4日おきに水道水で水を補給し、餌はホウバを中心にカルシウム補給のアサリの粉などを与えた。
親貝は伊那東小周辺の水路で採った約170匹。24日に稚貝の計測をしたところ、3ミリから10ミリの稚貝約3千匹が育っていた。
野口教諭は、「水温管理ができたことが成功のポイント」とし、冬期屋外養殖が可能になったことで「年間の養殖量が2倍になり、夏期の稚貝をそのまま育てることで親貝の供給もできる」とする。
今回の稚貝は、伊那東小に持ち込み、本年度発足した児童19人の「自然観察カワニナクラブ」でさらに養殖し、親貝に育てる。
ホタル愛好家の共通の課題はカワニナの確保。昨年3月に室内養殖のマニュアルを作成したところ、全国から280件を超える反響があった。「私の養殖技術が役立つと思う」と、今年8月ころまでに室内外の養殖技術マニュアルを本にしたいという。
「未知のものに挑戦するのは楽しい」と研究に取り組んできた野口教諭。今後は、カワニナが必要な地域や団体に提供するため、カワニナ養殖ボランティアを組織し、技術指導して夏期養殖に取り組みたい考えで、まずは伊那市内在住者を対象にボランティアを募る計画をしている。