【輝く!経営者 その後】ヨウホク 北林友和社長
株式会社ヨウホク
◆駒ケ根市赤穂11678竏・9
◆1951年創業、1959年設立
◆資本金3000万円
◆従業員33人
◆TEL0265・82・5238
◆FAX0265・83・6346
◆URL www.youhoku.jp
金属加工の分野で長年培った確かな技術で上伊那の地域工業発展に貢献している一方、近年では自社製品の開発と製品化にも力を入れる。中でも県内で数社が取り組んでいるだけというペレットストーブの開発では数年がかりの研究、開発の苦労が実り、業界の先端を走るまでになった。
半世紀以上にわたって積み上げてきたプレスや溶接などの金属加工の技術力の高さを見込んで、木質ペレットを燃料とするストーブの開発を上伊那森林組合が依頼してきたのは01年のこと。ペレットストーブは今でこそ広く知られ、製品も出回り始めてきているが、当時はまだ研究が緒についたばかりの段階だった。
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「うちの主な業務は大手や中堅企業向けの部品製造だが、時折『こんな物は作れないだろうか』という小規模な試作の依頼や相談が持ち込まれる。ものづくりに携わる者の性というのか、面白そうなアイデアを聞くと作ってみたくなり、損得なしでやってしまう」
ほとんどのアイデアは安全性やコストがネックとなって実用化には至らないが、中には見事に製品になったものもある。10年前、災害発生時の備えとして、横浜市の防災団体から担架を運搬できるリヤカーの製作依頼があった。軽量化や折りたたみ機構の採用など、随所に工夫を凝らして製作した製品は、その後あちこちの自治体や福祉関係団体などの評判を呼び、今に至っても注文が途切れない。今年も東京都世田谷区から100台の大量注文があるなど、息の長いヒット製品となった。
「基本的に物づくりは楽しいから好き。その上、作ったものが世の中の役に立ってくれるなら、作り手としてこんなうれしいことはない」
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ペレットストーブの実用化に向けた研究は、参考にすべき製品が存在しない中、まったくの手探り状態からスタートした。次から次へと出てくるトラブルに苦労しながらも一つ一つ問題を解決。ああでもない、こうでもないと多くの試作を繰り返し、ようやくほぼ満足できる製品に仕上がったのは実に3年後のことだった。
実用化の最終段階として、公共施設でのモニター使用などで実証データを集めてさらに改良を加え、05年に満を持して発売開始。初年度は官公庁や学校などを中心に15台を売り上げ、その後06年、07年の2年間には計140台を販売した。
だが、決して製品に満足しているわけではない。ユーザーからの声に耳を傾け、毎年地道な改良を重ねている。当初、燃焼は温度設定による自動制御方式だったが「部屋に人がいない時の燃料節約のため、最小の火で燃え続ける機能がほしい」というユーザーの要望に応え、最新型では好みに応じて火力を強、中、弱の3段階に設定できる機能も加えた。
「暖炉のように小さい火を安定してちょろちょろ燃やす方が技術的には難しい。あまり絞ると消えてしまうのでね。その一方で、とにかく暖かく、カーッと燃えてほしいという要望もある。ペレットストーブは暖かくないという印象を持つ人も多いが、『おたくのストーブは暖かいね』と言われると本当にうれしい。詳しい構造は企業秘密だから言えないが、風の当て方や、煙突から逃げる熱を抑える工夫、遠くまで熱が届くように温風を下吹き出しにしたことなどが報われた気がする」
デザイン面でも、炎が揺らめくのが見える前面のガラス窓を可能な限り大きくしているほか、従来1色だった本体の色も3色にバリエーションを広げている。
開発を始めた7年前に比べ、一般人の環境への問題意識は考えられないほどに上がった。地球温暖化防止を真剣に考える人にとってペレットストーブは魅力的な選択肢だ。加えて、この冬は灯油が高騰。経済性の面からもペレットストーブへの関心はさらに高まってきている。
本体価格35万円、煙突工事10万円、計約45縲・0万円と、設置時のコストはやや高めだが、県、市町村からの補助金制度もある。これまで納入先は県内ばかりだったが、この冬は県外からの問い合わせも増加するなど、需要は追い風だ。来季の販売目標は100台を見込む。
「自社製品の割合は徐々に増しているが、もう少し伸ばしていけるといい。このところ鉄価格がどんどん上昇してきているから、本当は1割くらい値上げしたいところなんだが、何とか努力して現状の価格を維持したい。最終ユーザーに直接使ってもらえる物を作るというのは楽しいことだからね