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【県弓道連盟会長 範士8段 山川茂樹さん】

伊那市荒井区川北

【県弓道連盟会長 範士8段 山川茂樹さん】

 6月、弓道の振興に尽くした長年の功績が認められ、県知事表彰を受けた。
 ・ス範士・スは武道の称号の最高位で、全国でも数少ない。そのため段の審査員や講習会の講師、大会役員などの役で忙しく全国を駆け回り、週末はほとんど家にいない。
 「県庁での表彰式にも出席できなかった。残念だったが、動けるうちは動いて弓道に恩返ししたい。表彰は関係者や家族のおかげです」
 ◇ ◇
 弓道は22歳の時、職場の弓道部の先輩に誘われて始めた。それまで弓には触ったこともなかったため、初めのうちは習得にかなり苦労した。
 「基本を徹底的に教え込まれた。頭では分かっても体はなかなか覚えてくれない。正しい型を体に覚え込ませるため、ひたすら同じことの繰り返しだった」
 わずかの時間も惜しんでけいこに打ち込み、良い指導者に恵まれたこともあって徐々に頭角を表した。全日本弓道選手権には3回出場して最高6位に輝いたほか、国体にも出場するなど活躍。
 子どものころは、恥ずかしがりで消極的だった竏窒ニいうが「弓道は自分との戦い。誰も助けてくれない。弓のおかげで自分を強くすることができたし、感謝の気持ちや人に対する気配り、気遣い、調和の大切さを教えられた」。
 経験を重ねるにつれ、後進の指導にも力を入れる。教えてきたのは武道の精神。弓道を通じて心を鍛えることだ。
 「的は静止している。その的に向かって射た矢が当たらないのはすべて自分の責任。だからこそ、常に反省がある。それが日常の社会生活や生き方、人生観に影響してくるんです。正しく引けば当たるはず竏窒ニはいっても、人間である限り、心も体も常に動揺している。心、体、技を安定させ、集中することが大切」
 「現代の乱れた社会の中で、弓道には人の心に一番必要なものがある。武道はスポーツとは違う。精神が欠けては武道ではなくなってしまいます。弓は何万回引いても、すべて同じにはできない。人生に同じ瞬間が二度とないのと同じようにね。だからその時その時に集中し、全力を傾けなければならない。『射即人生』といわれるゆえんですよ」
 米国にも2回渡り、ボストンとインディアナポリスで米国人の指導に当たった。彼らはまったくの初心者ではなく、ある程度の知識も技も持った者たちだった。
 「遠い日本の文化に興味を持って真剣に取り組んでいるから、本当に一生懸命だった。日本人も及ばないくらいにね。向こうにもアーチェリー(洋弓)はあるが、西洋にはない精神性を弓道に求めていたようだ」
 一昨年、国際弓道連盟が発足した。近い将来の世界選手権開催を目指している。
 「古来伝承されてきた弓道の良さを保ちながら、国際的にも発展していけば素晴らしいね。その時に、大相撲のように上位は外国人ばかり竏窒ニいうようなことにならないよう、若い人の育成にさらに力を入れていきたい」
 (白鳥文男)

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