【輝く!経営者 その後 ネクストエナジー・アンド・リソース 伊藤敦社長】
ネクストエナジー・アンド・リソース株式会社
◆駒ケ根市中沢4753竏・
◆2003年12月設立
◆資本金4000万円
◆従業員9人
◆TEL0265・87・2070
◆FAX0265・87・2071
◆URL www.nextenergy.jp/
◆本紙の長期連載企画「上伊那・輝く!経営者」で04年7月に紹介。
「このまま環境破壊が続いたら地球はどうなってしまうんだ。自分にはいったい何ができるんだ」。熱帯雨林の乱伐の実態を知ったことがきっかけで高まった地球環境保護への思いから、居ても立ってもいられずに03年、会社を設立。ビジョンに「自然エネルギーにより、2031年までに原子力発電所1基分に当たる電力量約100万キロワットを供給する設備を普及させる」を掲げ、自然エネルギーのパイオニアとしてさまざまな事業に挑戦してきた。
この間の4年半、環境問題に対する社会の意識は大きく様変わりし、同社の事業の柱も設立当時の風力発電と小水力発電から太陽光発電へと大きくシフトしてきた。環境保護が国際社会の最優先課題となりつつある現代にあって、時代の最先端を走る企業の取り組みはどんなものか。そして、伊藤社長が見据えるこの地球の未来とは竏秩B
◇太陽光発電パネルリユース販売
05年、国内で初めて「太陽光発電リサイクルセンター」を設立し、家屋の建て替えや解体などによって市場に出てきた太陽光発電パネルのリユース販売を始めた。中古パネルを販売するに当たっては、確実な品質保証が不可欠となる。パネルの寿命は40縲・0年ともいわれるが、出力性能は外観だけでは分からないため、品質を検証するための性能試験の方法を独自に確立。確かな品質のパネルだけを提供してきた。
「パネルは車と同じで、新品ならどこで買っても性能は変わらない。だが中古は違う。販売業者の良心が問われる」
昨年は、20年前に製造されたパネル6500枚を一括入手した。北海道の上士幌町がトマトの水耕栽培農場のために設置した大規模発電システムに3年間使用した後、農場閉鎖に伴って保管されていたパネルだったが、寒冷な北海道にあったせいか状態は非常に良く、性能検査したところ、全体の8割は発電性能90%以上を維持していた。自信を持って中古品としては異例の1年保証をつけた上、市場価格の約半額の1枚9800円で販売。発売後2カ月で約半数の3千枚を販売した。在庫は残りわずかという。
「中古パネルは今後も確実に増えてくる。減ることはあり得ないのだから、リユース市場は間違いなく成長するだろう。この状況を大手が指をくわえて見ているはずはなく、いろんな会社が参入してくると考えられる。当然競合が激しくなるだろうが、自分たちはこれまで培ってきた技術で勝負する。検査し、データを取った枚数は日本一なのだから」と積み重ねた実績に自信をみせる。
リユース事業にはいまだにライバルが現れておらず、同社の独壇場だ。
◇グリーン電力証書
「グリーン電力」とは、環境への負荷が少ない自然エネルギーによって発電される電力のこと。通常の電力に比べて割高になる欠点があるが、自前の自然エネルギー発電設備を持たない企業や個人が環境価値を上乗せした価格で「グリーン電力証書」を購入することにより、自然エネルギー発電事業者を援助する形となる。購入者は間接的に環境活動を応援することができ、環境活動をピーアールする一環ともなる。
同社は6月、この「グリーン電力証書」を手軽に購入できるインターネット上の取引所を開設した。(1)電力計算が不要な定額(3千円、5千円、1万円)の「簡単購入」(2)イベントなど短期利用者向けの「スポット契約」(3)継続利用者向けの「長期契約」(4)1万キロワット以上が対象の「特別契約」竏窒p意し、希望者の多様なニーズに対応している。特に(1)、(2)はオンライン上で購入手続きを完了できるよう工夫した。
「これだけ簡単に買える仕組みは日本初。これが広く一般の人の環境意識を変えることにつながれば、温暖化問題で立ち遅れた日本から世界に向けてムーブメントを起こすことも可能」
太陽光発電システムの設置実績は、世界的には毎年30%の伸びを示している。ところが国内ではコストの高さがネックになるなどの理由により、05年をピークとして06年、07年は2年連続で減少している。
しかし、同社は大規模なシステムを次々に設計、施工。ユーエスアイ(宮田村)の計350キロワットシステム(パネル枚数1850枚)、天竜精機(駒ケ根市)の90キロワットシステム(同500枚)をそれぞれ手掛けるなど、着実に業績を伸ばしている。
◇未来への思い
太陽光発電への一般の関心はかなり高まっている。行政の政策としても、一時廃止されていた補助金が復活し、これまであまり関心がなかった企業の姿勢も変わってきている。
「設立当時は、今ほど環境への意識が高くなかったのに加え、自分の力もかえりみずによくやったと思う。その後も失敗ばかりで歩みは決して順調ではなかったが、一から市場を開拓し、技術を積み上げてきた。その中で貴重な経験を重ね、自分を含めて従業員が成長できたし、社内の体制も充実してきた。ベンチャーは厳しい状況だからこそ知恵を出し、努力する。たくさんの失敗をしてきたが、おかげで最近は的を大きく外すことがなくなってきた。独自のアイデアはまだまだいくらでもある」
「今でも、設立当時の思いは変わらない。強くなりこそすれ弱まることはないし、方向性は間違っていなかったと確信している。世論も確実に変わってきている。東京都の取り組みは特に心強いものだし、国の政策も大きく変わった。しかし、まだまだ地球環境の将来を安易に考えている人は多い。今は世界的にみて間に合うかどうかぎりぎりのところだと思う。地球温暖化の暴走が始まったら地球は終わり。自分たちとしては、できることを模索しながら、一歩一歩着実に進んでいきたい」