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ニュース

第4回
伊那谷発-個性ある食文化を全国へ【下】

【出席者】
●登喜和冷凍食品株式会社
社長 登内英雄さん(53)
●合資会社宮島酒店
企画部長・社長代行 宮島敏さん(43)
■司会 伊那毎日新聞社 企画部 毛賀沢明宏

第4回<br>伊那谷発-個性ある食文化を全国へ【下】

 伊那谷には様々な食品製造会社がある。その中から、長い伝統を引き継ぎながら新たな展開の道を模索する登喜和冷凍食品の登内英雄社長と、宮島酒店の宮島敏企画部長に、直面する課題と今後にかける夢などを話し合ってもらった。その後編。

「地産地消」の声の高まりの中で

第4回<br>伊那谷発-個性ある食文化を全国へ【下】

司会 消費者の食への関心の高まりということですと、近年大きくクローズアップされているのは「地産地消」という視点ですが、この点ではなにかご意見はありますか?
宮島 よく「地酒」と言いますよね。ご当地で消費されているお酒、地元の酒ということですが、これまではその原料は地元のものではないことが多かった。特に良い酒となるとたいてい兵庫県産の「山田錦」という酒米が原料だったわけです。私どもでは、前からそれに疑問をもっていました。上伊那には「美山錦」という素晴らしい酒米がありまして、この米の力を存分に使い切っておいしい酒を造ってみたいと、もう20数年来試みてきたのです。そして05年春に無農薬栽培の美山錦を使った純米酒で全国新酒鑑評会の金賞をいただくことができました。山田錦を使わず、それも純米酒でというのはきわめて異例なことなんです。
登内 そうすると「消」つまり販売先もやはりこの地域に重点を置いたのですか?
宮島 そうでもないのですよ。「地産」にはかなりこだわってきたわけですが、こと販売的には、今までは、東京を始めとして全国に販売店を広げることに主眼があった。上伊那の「美山錦」を使ってこだわって造った酒だということを理解してくださる販売店さんを全国に開拓して、いわば上伊那の米と酒を全国に発信しようというつもりでしたよね。変な言い方ですが、お陰様で全国的に評判も広がりはじめて、それで、地元の皆さんにもあらためて注目されるようになった。現在は「消」の方も、もっと今以上に地元に力を入れなければいけないと思っているところです。
登内 興味深い話ですね。こうや豆腐の場合も、小規模な手づくりの凍み豆腐などは別として、それなりの規模で生産しているのは全国で長野県の4社だけ。販売先は、関西を中心に全国ですし、原料もコスト面を考えれば外国産のものが主軸にならざるを得ない。もちろん遺伝子組み替え大豆などは安全面から排除していますが。こうなると「地産地消」というわけにいかない。でも、これってなにか違うなとずっと考えてきたんです。
宮島 そう考えられるきっかけが何かあったんですか?
登内 兵庫県の山奥に八千代という町がありましてね、そこは「こうや豆腐のふるさと」といううたい文句で街おこしをしようとしているんですよ。その町では、もう、こうや豆腐は造っていないんですよ。でも、昔作っていた記録を引っ張り出してきて、小学生などに昔ながらの方法で凍み豆腐を作らせ、それを瀬戸内海沿いの町まで昔ながらの方法で運び出したりする。お母さん達が運営する売店でこうや豆腐を芯に入れた昔ながらの巻き寿司を作って、それでたくさん客を呼んだりもしている。こうや豆腐が街のアイデンティティを構成しているわけです。信州は、こうや豆腐の一大産地で、私たちも現に伊那で仕事をしているのだけれど、そういうことは長野県の人にはほとんど知られていない。自分の会社が地域に返しているものは何があるんだろうって?ふと疑問に思ったことがあるんですよ。

「食」は造り手の自己表現

第4回<br>伊那谷発-個性ある食文化を全国へ【下】

司会 登内さんは、こうや豆腐の歴史とか、長野県が一大産地になった経緯とか、いろいろと研究されていますよね。それは今のお話とつながるんですか?
登内 そうですね。やはり、自分たちがこうや豆腐をつくっている、その歴史的なつながりとか、社会的位置とか、意味とか、そういうことを知りながらでないと、本当の意味で食品をつくることにはならないのではないかということですかね。タバコの箱くらいのこうや豆腐にもいろいろなものが詰まっている。造り手がそのことを知ってつくることによって、消費者の皆さんにも、それを理解していただくことができる。もちろん宣伝するというか、能書きを知ってもらわなくてはだめですけどね。
宮島 私も、そういうことは、とても大切だと思います。酒は私たち、造り手の「自己表現」ですからね。それで、ビンに貼るラベルにいろいろと書き込んでいたら「宮島酒店のラベルは字ばっかりだ」なんて言われて、それでちょっと反省したんですよ。でも、その「食」の歴史とか、食べ方とか、材料の生産履歴とか、そういうことをしっかりと語ることができるようになるというのは、造り手の誇りですし、消費者の方も今は、そういう「語り」を求めているところがあると思うんです。
登内 宮島さんが今一番「語りたい」のはどういうことなんですか?
宮島 昔からのレーベルである「信濃錦」のほかに数年前から「斬九郎」という酒を出しているのですが、そのシリーズで精米歩合80%の物を出しています。原料米を20%しか削ってないんです。じつは、ウチの無農薬米の栽培をお願いしている飯島町の吉川さんという農家の方に、「俺たちが精魂込めてつくった米を40%も50%も削ってしまって悲しい」と言われたことがあるんです。それを聞いて、酒づくりでは「雑味がでるから」とタブー視されてきた精米歩合80%で酒を造ってみよう、それの方がひょっとしたら米本来の味が出るかもしれないと思ったんですね。お陰様で、コクがあって味が深いと評判になっているんですが、この商品によって、改めて契約米の力を信じる事ができましたし、農家の方々の思いと私どもの思いを、もっともっと語らなくてはいけないと感じました。

地域企業の共同で「新たな食」の発信を

第4回<br>伊那谷発-個性ある食文化を全国へ【下】

司会 お二人とも語りたいことは山のようにあると思うのですが、そういう思いを込めて、今後どんな新展開を考えているか?をお願いします。
登内 こうや豆腐は地元で「産地」にふさわしい展開を考えるとともに、やはり、関東を中心とした「納豆文化圏」に切り込んでいかないとだめでしょうね。それに、既に着手していることですが、こうや豆腐のほかに、生の豆腐をペースト状にして、業務用の「白和え」の素などにして販売しているんです。それを使う業務店ごとに希望の味や柔らかさに応じて作っています。全国のデパ地下で惣菜売場がブームになっていますが、かなり使用されているはずですよ。この領域はまだまだ開拓の余地が大きいので楽しみです。
宮島 へぇそういうものも作っておられるんですか?じつは、当蔵も、甘酒がかなりの評判を呼んでいまして、日本酒の展開だけでなく、この甘酒もそれ自体で今後を考えるべき時がきていると思っているんです。以前地域の食材見本市に参加させてもらったときに、この甘酒とマッチする地元産のヨーグルトを見つけました。それにトッピング用のブルーベリージャムも地元にあるんです。これとセットにして売り出したらどうかと、今販売店さんなどへ働きかけをしているところです。
登内 それは是非食べてみたいな。そういうマッチングの話だと、例えばウチからは、おからが大量に出るんですが、そういうものを地域の別の業種の企業さんと協力して活用していく方法も模索しています。こうや豆腐のおからは、普通の生豆腐のおからに比べて食物繊維の含有率が70%と非常に高い。これはもうそれ自体で機能性食品ですよね。「ホエイ」という豆腐が凝固する際の上澄み液も利用価値が高いと思います。こういう未利用資源を、醸造業などの地域の応援を受けて利用する方法が開拓できると、地場の食品産業は大きく新たな展開をするのではないでしょうか。
宮島 そうですよね。上伊那は特に水が素晴らしいから、食品製造業には最適の条件がある。これを活かしてさらに個性ある発展をしていくためには、様々な経験と知識の集積と共同が必要でしょうね。もちろん日本酒造りが基本ですから、それをおろそかにするわけには行きませんが、そういう挑戦をするのは楽しいですよね。
登内 常々思っているんですが、仕事もね、ワクワクドキドキしながらやらなければ、新しい・面白い展開はできませんよね。伝統的な食品の品質を守りながら、新しい食べ方、新しい楽しみ方を発見し提案していく。それだけでなく、さっき言ったような未利用資源のまったく新しい活用方法を研究していく。そんなことを夢見ながら、忙しく毎日を送っているのが一番楽しいかもしれませんね。
司会 どうもありがとうございました。(終わり)

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