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北・中央・南-日本アルプスを走り抜ける男
飯島浩さん(36)=伊那市東春近=

「山を走る爽快感がたまらない」
薪ストーブ輸入販売会社「DLD」勤務

北・中央・南-日本アルプスを走り抜ける男<br>飯島浩さん(36)=伊那市東春近=

 輸入薪ストーブの販売で全国有数のシェアを誇るDLD(本社・伊那市)。その店頭で、目を見張る写真を見せられた。深く切れ込んだ谷、青空の下に広がる大雪渓……アルプスの登山道を小さなリュックサックを背負って走り抜けていくランナーたちの写真だ。
 ◇ 
 「これ、私なんですよ。腹ぺこぺこの時ですね」
 同社カスタマーサービス担当。04年8月に行なわれた「TRANS JAPAN ALPS RACE」に参加した。
 富山県の日本海から、北アルプスの剣岳・槍ヶ岳・上高地を走り抜ける。一般道70キロを経て、中央アルプスの木曽駒ケ岳から空木岳を縦走。さらに、駒ヶ根市から長谷村まで走り継いで、南アルプスへ。仙丈ケ岳・塩見岳・荒川岳・赤石岳・聖岳の頂きを経て畑薙ダムに下り、車道70キロを降りきって静岡県の太平洋に至る。全長421・5キロ、制限時間192時間(8日間)。気が遠くなるような過酷なレースだ。
 2回目になる04年のレースには、全国から8人が参加。完走が6人。タイムオーバーが1人。残念ながら1人はリタイアした。
 「『こんなの絶対無理』っていうのに挑戦するのが楽しいじゃないですか」
 細面。一見、華奢(きゃしゃ)そうに見えるスレンダーな体型だが、その体力は強靭だ。緊急時以外の山小屋泊りは禁止。小屋で食事をとっても良いが、時間調整が難しいため食料持参が基本。風雨をしのぐチェルトや携帯食で、合計約8縲・0キロを背負って走る。睡眠は、良くて2縲・時間。どうしようもなく眠くなり、登山道にバタリと横になることもあるという。
 「宝剣の鎖場で、一瞬意識が飛んだんです。『あれ!?なんでこんなに瞬きが遅いんだろう』と気がついた瞬間に怖くなりました」
 伊那市出身。駒工在学中からマウンテンバイクに魅了され、様々な山を乗り回した。95年に国体の「登山・縦走」の選手に選ばれ、北信越大会で優勝。山に登るだけでなく走る魅力に取りつかれた。
 以来、奥多摩の山71・5キロを走り抜ける日本山岳耐久レースや、丹沢山系の北丹沢耐久レースなどに次々と挑戦。山岳ランニングだけでなく、マウンテンバイクやカヌーなど5種目がセットになった山岳版トライアスロン=「アドベンチャーレース」にも出場している。
 アルプス縦走では赤石岳頂上で、それまで走り抜けてきた北・中・南のアルプスの頂のほとんどが見渡せる好天に恵まれた。「これだけ走ってきたのか」としみじみ感動。だが目を南に転じると、これから走る山並みが延々と連なる。「本当かよ、と力が抜けました」と笑う。
 「今度のレースは10月の8・9日で、会社のイベント『ストーブまつり』とかち合っているんです。ホント困ったなぁ」……山岳ランナーは屈託なく語った。
【毛賀沢明宏】

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