旧井沢家住宅で俳句の講演会
伊那市西町区の旧井沢家住宅(市有形文化財)で21日、俳句の講演会があった。「伊那部宿を考える会」(田中三郎会長)などの主催で、伊那部宿に集った近代の俳人について約60人が学んだ。
18日に始まった伊那部宿に関わりの深い俳諧結社の句集などを展示した俳句鑑賞の企画で、最終日に講演会を開いた。
横山みづほ(俳号)本名よね子さんが「父・花笑の思い出」と題して、西町の俳人で結成した俳諧結社「観月社」を背負ってきた河野花笑さんを語った。
「父は強い運をもって生まれた」と、戦争や病気などがあっても4、5回命拾いしたこと、戦地から戻ってからは病魔に苦しんだことなどを話し、「病気と闘ってはいけない。病気と遊ぶ、戯れる気持ちなれば生きていける」と話していたことを語った。
横山さんは父の勧めで50歳を過ぎて俳句を始めたが、威厳ある怖い父から、老年になって俳句を通して人生観を学んだという。94歳で亡くなった花笑さんが80歳半ばの元気なころ、「人間の体は亡くなると灰になる。それで何もかも無になるのではない。魂は宇宙の微塵になって残る」と語った死生観も紹介。「今になって父の哲学が分かるようになった。父の魂に支えられているのではと思う」と話した。
郷土史研究家の竹入弘元さんによる「近代伊那部宿の文学熱について」の講演もあった。