長谷の糸ぐるまが、市町村合併後、初めて高遠町の民話「狐の曼荼羅」に挑戦
ゆかりの寺、西龍寺で初上演
長谷に伝わる民話を切り絵紙芝居にして、語り伝えてきた「糸ぐるま(久保田文子代表)」は、民話のテーマを伊那市内の他地区に広げ、初めて高遠町の民話を題材にした切り絵紙芝居「狐の曼荼羅」を製作。28日、この民話が伝わる高遠町西龍寺(清水俊一郎住職)で初上演した。
会場には夏休み中の小学生や門徒ら20人余が集まり、画面を見入り、日々努力、精進し、弥陀の世界に入った白狐の化身「お松」に思いを重ね、感動を共有した。
大型紙芝居9作目、13枚で構成する「狐の曼荼羅」は、今から約500年前、西龍寺にお松という、働き者で心優しいお手伝いさんがいた。長年一生懸命働いていたお松はある日「里に帰りたい」と暇ごいをした。最後のお勤めを済ませたお松は「お礼に」と1枚の絵を書き残して立ち去った。その後、住職は墓地で眠るように死んでいる白狐を見つけ、尻尾の先に墨がついているのを見て、ハタと「お松は白狐だったのか」と気づいた。白狐を手厚く葬った住職は、お松の残した絵をよく見ると、あちこちに毛がついていた。この狐は生死の境をさ迷っている間に、諸仏の悟りの境地である弥陀の世界を描いたものと伝えられ、今も大切に保存されている-というストーリー。
久保田さんは「寺に伝わる『狐の曼荼羅』を見せていただいた時は、感動で涙が止まらなかった。こんなすばらしい話を紙芝居にして、みんなに見てもらい、ふるさとを大切にする心が育めばと思った。これからも市内の民話を掘り起こし、伝えていきたい」と話す。
同寺の清水昭代さんは「寺の風情が伝わるすばらしい色彩の紙芝居に感動した。多くのみなさんに紙芝居を通じて民話『狐の曼荼羅』が知ってもらえればうれしい。『曼荼羅』もこの紙芝居も寺の宝」と感謝した。
また、久保田さんは「民話の本筋を変えず、いかに物語を膨らませるかに苦労した」とも。