個性あるウイスキーの味を楽しんで欲しい
伊那市 カフェ・カフカ店主 有賀正臣さん(32)
洋酒と語らいの静かな空間を提供して5年
シックなドアを開ける。抑えた照明の中に、ゆっくりジャズの流れる静かな空間が広がる。
カフカ。この店で、洋酒の棚を背にカウンターに立つ。開店5年。洋酒と簡単なつまみだけのカフェ。メニューはない。
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好きだというウイスキーは常時30種類近くが並ぶ。お勧めは、スコットランドのスカイ島で作られるタリスカーという銘柄。麦芽を燻す時につくすピート香(スモーキーフレーバー)とヨード香(アルコール成分の発する香り)とのバランスが良いという。
次はアイラ島で作られるラガブーリン。16年間も熟成させたもので、スモーキーフレーバーが口の中に広がる個性ある酒だ。
ニッカが誇る樽出しモルト、シングルカスクも「これが日本で作られたのかと思うほど」の味わいだという。
ウイスキーに関しては銘柄を指定しなくても、「こんな味」と言ってくれれば、辛口・甘口・クセの強いものなどをチョイスしてくれるという。もちろん、ソルティドッグやジントニックなどのスタンダードカクテルはすべて提供する。
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客は30代中頃を中心に様々な老若男女。「お酒へのこだわりを中心にするよりも、お客さんとの会話を大切にしたい」という気持ちもあり、努めてカウンターで話をするが、店の雰囲気からして、一人または二人連れの静かに話す客が多いという。
修業時代の東京の店に比べれば、一人で来店する若い女性客が多い。東京のカフェは忙しくてバーテンダーが若い女性とゆっくり話す機会が少ない。伊那では、酒の話や世間話をする機会が多く、女性一人でも入りやすいのではないか、と見ている。
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伊那市出身。高校時代からイタリアの田舎風レストラン・トラットリアを持つことが夢だった。だが周囲は反対。ならば、実際の現場で修業するしかないと、20歳で東京西麻布の著名なカフェに飛び込んだ。カクテルの作り方、シェーカーの振り方……何ひとつ教えてくれない。「見て盗め」といわれる世界で勉強した。その後、イタリア料理のコック修業もした。
「店を持つためには、まず利益率の高いお酒を覚えて、次に料理の腕を磨く」。最初からそう考えて行動した確信犯だ。
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夢は当然、トラットリアを開くこと。カフカを5年間切り盛りしたが、「年上のお客さんが多く、お話の相手をできるほど人生経験がない。もっと勉強しなければ」と話す。
9日には、開店5周年を記念して、居酒屋の地球屋レノンとともにブルースの屋外コンサートを開く。伊那市西春近の知立市野外センターで午前10時開場。
「お客さんに日頃のお礼をし、新しい出会いができれば……」
夢の実現に向けた次の一歩が始まる。
(毛賀沢明宏)