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2511/(月)

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第5回 地域の力で発信! 宮田村のものづくり【上】

--諏訪圏工業メッセに参加する宮田村商工会工業部会に聞く--
【出席者】■(株)マスダ社長 増田清さん
■(株)パブリックレコード社長 奥田憲一さん
■(株)テーケー社長 原田和愛さん
■(株)宮田アルマイト社長 清水光吉さん
■司会 伊那毎日新聞 毛賀沢明宏

第5回 地域の力で発信! 宮田村のものづくり【上】

 13日から諏訪市の諏訪湖イベントホールで諏訪圏工業メッセが始まる。出展企業255社、地方では最大級のこのメッセに、上伊那からも、伊那市・箕輪町・南箕輪村・宮田村・飯島町・辰野町の商工団体や複数の企業が参加する。
 宮田村商工会は、工業部会に加盟する4社が共同出展。部会としての出展は、2月に東京都新宿区で開催のテクノメッセ、6月に東京都お台場で開催の全国機械要素展に続いて05年だけで3回目だ。
 大手メーカーがコストの削減を求めて生産拠点を海外にシフトする中で、部品製造を中心とした地方のものづくり企業には、新しい取引先を独自に開拓することが問われている。宮田村商工会の動きは、これを地域の力で進めていくためのものだといえよう。
 もちろん、伊那市・駒ヶ根市・箕輪町など上伊那の他の市町村でも同様の動きが見られるが、展示会用の専門ブース製作への力の入れようなどからすると、宮田村の企業の結束が一歩抜き出ているようにも見受けられる。
 力を合わせて企業展・工業メッセに出展する意図とメリットはどのようなところにあるか? 地域のものづくりに問われているものはなにか?-諏訪圏工業メッセに出展する宮田村の4社の社長に語り合ってもらった。

宮田村は個性あるものづくりの宝庫

第5回 地域の力で発信! 宮田村のものづくり【上】

司会 最初に、自己紹介をかねて、諏訪圏工業メッセで主に自社のどのような技術をアピールする予定か話してください。
増田 マスダです。内視鏡などの医療機器や顕微鏡などの精密部品加工が主ですが、現在は微細加工に力を入れています。諏訪メッセでは、0・05ミリで細く長く削る、直径0・05ミリの細い穴を深く開ける-という微細加工の技術をアピールしたいと思っています。
奥田 パブリックレコードの奥田です。ウチが製造するマスター盤レコードは、現在世界中で3社しか製造しているところがないので、その点で名前を知られているのですが、もともと「街の録音屋」から出発した会社で、音や映像の記録とデータ処理が中心です。コンピューターを活用したオンデマンド印刷や、クリーンルームでの精密部品組立ても行います。諏訪メッセでは、県内にまだ少ないラミネート加工を施すCDの画面印刷の技術をアピールしたいと思っています。
原田 テーケーです。ずっと自動車関連のパイプ加工中心でやってきました。高級車のアームレスト(ひじかけ)の製造・販売で、多くの自動車メーカーさんと取引きさせてもらっています。パイプを歪めずに曲げる技術には自信があるので、それを宣伝したい。それに近年、パイプ加工の特殊技術を発展させた圧入プロジェクション接合という新技術を開発し特許をとりました。応用範囲は広いので、その宣伝ができればと考えています。
清水 アルミニウムなどの金属部品の表面処理をしています。宮田アルマイトという名前のとおり、創業時からアルマイト加工が中心ですが、電着塗装や、無電解メッキなども行なっています。諏訪地域には表面処理のライバル会社が多いので、技術面・納期面・価格面で、よりニーズに応えられることをアピールしたいと思います。
増田 今回の出展は4社だけど、宮田村には特色あるものづくり企業が多いんですよ。工業部会には78社が加盟していますが、一つの村でこれだけのものづくり企業があるのも珍しい。出展社が協力して宮田村のものづくりの一端をアピールできればと思いますね。

近隣の技術の高い企業との出会いを求めて

第5回 地域の力で発信! 宮田村のものづくり【上】

司会 メッセに出展される場合に、各企業ごとに目的があると思います。今紹介していただいた独自の技術をアピールして、どんな具体的な成果を得たいと考えていますか?
原田 ウチは現在約9割が自動車関連の仕事でね。自動車の場合は、長いスパンで仕事が進んで行く。例えば、今引き受けている試作だって、再来年の春から本格生産が始まるというように。だから、メッセや企業展に出て、そこで新しいお客さんが見つかるというのはめったに無い。むしろ、例えば、バネ屋とか、自分にはできない領域で、一緒に組んで仕事ができそうな高い技術を持った会社と出会うことが重要だと思ってるんだよ。
増田 ウチのような医療機器の部品も事情は同じだね。メッセに出たからと言って簡単に注文にはつながらない。お陰様で今忙しいから、注文されても受けられないんだけどね。何より重要なのは、他所の技術、例えば微細加工ではどんな新しいことに挑んでいるか、その方向性や進展状況を知ることだと思うんだよ。他所がやったことを知らないで後を追っていたら素も子もないじゃない。
 お客さんを一番見つけているのは奥田さんのところじゃないの?
奥田 また、そんなことを言って……(笑)。まぁ、会社案内や名刺の印刷などで注文いただけることもありますけど、それはやはり付随的な目的ですね。むしろ、企業の展示物などを見て、製造業の企業がどのようなデータ変換の技術を必要としているかを探ることが大きなテーマです。例えば、DVDやCDを使った商品カタログを必要とする企業はどのくらいになってきているのか?まだ、紙媒体で良いのか?……というように。音や映像を記録に残す、あるいは古い記録を最新のメディアに変換する仕事はこれまで基本的に個人市場が相手だった。でも、今後は企業や公共団体に広げて行きたい。そのための現状把握が一番の目的ですね。
原田 そうだなぁ、そうすると宮田アルマイトさんが、一番、実際の取引きに関連するかも知れないな……
清水 そうですね。さっきも言いましたけど、諏訪地域は昔から精密機械製造が盛んで、当然そこと取引きするアルマイトとかメッキとかの業者が多数あるわけですよね。だから、これまではなかなか、諏訪から上伊那まで仕事が回ってこなかった。
原田 だけど、技術水準では負けんだろう?
清水 はい。特に、今、環境対策の視点から自動車関連を中心に六価クロムを使わないクロムフリーや、鉛を使わない鉛フリーの部品造りが問題になっていますよね。当社には、県内でもまだ数社しかない六価クロムフリーで表面処理する全自動のラインがありますので、それを大いにアピールすればそれなりに食い込んでいけるのではないかと思っています。

環境保護規定などへの対応策も早めに

第5回 地域の力で発信! 宮田村のものづくり【上】

司会 今言われたクロムフリー、鉛フリーへの動きは、上伊那の製造業にもやはり大きな影響を与えていますか?
増田 あたり前さぁ。清水さんのとこのようなメッキでも、ウチのような「曳きもの」(切削加工)でも、材料にクロームや鉛が入ったものが使えなくなった。それで、加工を引き受けても材料がそろわないという場合が多くなってきているんだよ。メーカーサイドは部品の単価は簡単に上げてくれない。でも材料は高くなる。これは本当に困ったことだ。
原田 クロームや鉛が入っていない材料だと加工の際に歪みが出やすいということもあるよな? 小さいものだと余計困るんじゃないの?
増田 本当に精度が出ない。小さいものもそうだけど、大きいものの加工の方が出る歪みは大きいよね。鉛フリーの関係では、後、ロウづけという金属パイプに金属パイプをくっつけたりする加工で、溶接材が銀や金しか使えなくなった。やっぱりコストが高くならざるをえない。
奥田 進んでいる企業は、そういう事情をよく知っていて、対応が早い。地方の製造業だって、メッセなどに出て、回りの対応を良く見て、早め早めに手を打たないと太刀打ちできないですよね。あと、精密電子部品の洗浄の工程などでは、溶剤洗浄液に含まれる化学成分が問題なりますよね。でも、充分な洗浄力を確保するのも問題で、なかなか100%対応することは困難だ。そうするとメーカーごとにどの程度のものを求めているか、そこをつかんで、的確に対応することが重要になってきていますよね。
原田 どんな技術だって遅れて開発していたんじゃ話にならないわけで、市場の動きや、環境保護の新しい動きなどとの関連で、他所ではどんな技術開発に進もうとしているか、それを情報収集して知ルことがメッセ参加の重要な意義だよな。
(続く)

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